先頭交代の仕方
市民レースでは、先頭走者のスピードが落ちているのに次に先頭を牽くべき2番目の選手が前に出ないケースを目にすることが多い。牽きたくない場合もあるだろうけど、おそらくこれは先頭交代に気が付かないか、自分が次に先頭を牽かなければならないのだという意識がないからだと思う。先頭が替わらなければ次第に集団のスピードも落ちてしまうから困った状態だ。
結果的に、集団全体のスピードが上がったり下がったりと不安定な状態になるが、高速走行でスピード差が激しい場合はこれも落車を誘発させる原因のひとつ。
先頭交代は、本来、先頭走者がペースダウンする前に合図を出してから走行ライン(以下、ライン)を変えて交代するのがセオリー。この時に、2番手の走者(以下、2番手)は、自分の番が来たからと急にスピードを上げてはいけない。
冒頭のように、合図もなくラインも変えずにペースダウンしている先頭を追い抜く時以外は、スピードを変えずにそのままのスピードを維持するのが基本。レースでもペースアップして先頭に出るケースを見掛けるがこの方法は間違い、気をつけよう。スムーズにローテーションを回すためには、普段の練習からスピードが上がったか下がったかを体感で判断できるようにしておくことも大事だと思う。
以上を踏まえて、実際にどのように先頭交代を行えばよいのか、その方法を説明していきます。
先頭走者がライン変更する場合は、市民レースでは基本的にローテーションは反時計まわりだから先頭は左側に移動する。仮に普段からチーム練習などで慣れていて、プロレースのように風向きによって回り方を変えたいと思っても、集団内で統一されていないと危険なので、このやり方以外は行わないほうがよいと思う。
このローテーションの時に、2番手が、右風だからと風の抵抗を少なくするため風下となる前走者の左側に前輪を被せるのはとても危険な走り方だ。短時間でもやってはいけない。プロレースでは右風では先頭が右側に移動する時計まわりだから左に車輪を被せてラインを組むけれども、市民レースでは厳禁。
そして、レースでは、参加者全員が共有していなければ成立しないのがローテーションの回し方。レースではローテーションに対する選手個々人の知識が違うから、先頭交代しながら走っている時に、もしも途中で止まってしまったならその時は経験者が優しく教えてあげよう。
他にも、先頭交代をする時に気をつけておいたほうがよいことがいくつかあるので挙げておこう。
・先頭走者はラインを変える前に、自分の後輪に後ろの前輪が被さっていないかを確認する。頭を下げて左下を見るだけで確認できる。車輪が被さっている時にラインを変えるとほぼ確実に後ろのライダーが落車するから気をつけたい。
・先頭が合図を出してラインを変える時に、もしも2番手が前に出ないかもしれない場合は、ラインを変えながら右後方を振り向き2番手に視線を送る。これは「次はあなたの番です」という意思表示。交代がずいぶんスムーズになると思う。
・先頭交代のライン変更は緩やかに行うべきだが、レース展開から2番手が前に出ない選手だとあらかじめわかっている場合は、車輪が被さっていないか確認後、急激にライン変更してスピードダウン。2番手が先頭を牽かないとローテーションが止まってしまうからこれは強制的に前に出させる方法。(できれば使いたくない)
・合図は先頭交代に慣れている選手は上の写真のように肘で行う場合も多いので、2番手を走る場合は見落とさないように注意しておこう。さらに熟練した選手はライン変更だけで合図なしのケースもあるから先頭の動きに注意する。くれぐれもその後ろで一緒にラインを変えないように。
・先頭はラインを変えたら速やかに後ろに下がる。いつまでもスピードを落とさないで並列していると(なぜかわからないがたまに居る)、2番手が早く前に出ようとスピードアップして隊列がばらけてしまう可能性もあるからだ。
ただし、トレーニングで先頭交代しながら走っている場合については、路側帯がない道路では車道の左側ぎりぎりを走らざるを得ないケースもあるから、その時は、先頭はスピードを落とせないので(落としたらすぐに隊列全体のスピードが落ちてしまう)、2番手は交代合図があったら追い越して前に出る。先頭は隊列に追い越されながら少しづつスピードを下げて最後尾に付ける。この時に隊列の中でもしも中切れが起こっていたら、そこに入ってできるだけ隊列がばらけないように意識しながら走ることも必要です。トレーニングでは、きれいなローテーションが選手個々の能力を引き出していくことにも繋がるからですね。