先頭を牽き終えたら
レースの集団走行では、平地で先頭を交代しながら走る場面では、スピードが上がれば上がるほど集団が縦に伸びて、高速を維持するために一列棒状の状態になったりもする。道内の市民レースでは集団が大きい場合はまず見ることはないけど、メイン集団から先行した小集団で走っている場合はほとんどが一列棒状の状態だ。
この小集団は、メイン集団から意図的にアタックして出来上がった逃げなのか、もしくは上り坂で他のライダーとの走力の違いから飛び出す形となった先行グループなのかもしれないが、いずれにしても、逃げに乗れたメンバーは全員が最後まで逃げ切りたいと思っているはず。
そこで、ここでは、体力は高くてもまだレース経験が浅いという方向けに、先頭交代の仕方を交えながら、こういう展開になった時に注意しておくべきことを書いてみます。先頭交代の仕方は、レース以外でも高速で集団走行する時の参考になるかと思います。
1)先頭交代時の実践法
まず、先頭交代では、先頭牽きを終えたライダーは左側に車線を変えて(風向きを考慮しない市民レースの場合)、スピードを落としながら後方に下がり、最後尾が近くなったらまたスピードを戻し、元の隊列に合流する。この時に注意したいのがスピードを戻すタイミング。足にまだ余裕がある場合は問題ないと思うけれども、心配なのが足に相当の疲労感を感じながらも頑張って先頭交代に加わっているとき。このような状況では、隊列に戻る前にスピードを落としすぎると、その隊列に付きそびれてしまうことがあって、足がいっぱいの時は最後尾と間隔が開きすぎるとその集団から切れてしまいかねない。
集団走行は、空気抵抗が軽減される恩恵で自分が出せるスピード以上の領域で走ることができるけれども、間隔が広がるほどドラフティング効果が薄くなり、このようにいっぱいいっぱいの時はその差を詰めるのも大変だ。復帰することができても使わなくともよい無駄足で余計な体力を使ってしまう。無駄足を使わないためにはどうすればよいのか、ローテーションでは以下の点に注意しよう。
本来、ローテーションは、先頭牽きを終えて左側に移動した時に足を休めるのではなく、隊列の最後尾に付いてから、次に先頭牽きの順番が来るまでドラフティングによって集団内で足を回復させるという意識で走るのがローテーションの正しい走り方。
隊列の左側走行時にスピードを落とすのはあくまでも最後尾に移動するためのもの。だから隊列から外れてすぐにでも足を休ませなければならないほど先頭を牽くのは、先頭で力を使いすぎているということ。ローテーションに最後まで残れるよう牽く時間を加減しておくことも大事な戦略だ。疲労感が大きくて牽けない時はすぐに換わっても構わない。
ただし、毎回毎回大集団でのようにまったく牽かずに交代していると、その集団内では嫌われる。回復してきたなら、少しでも先頭を牽くのが逃げ集団におけるセオリー。先頭を牽いている他の選手からは、牽けないのか牽かないのかわからないし、どちらにしてもそういう選手は切っておきたいだろうから、牽かない選手が居る集団では後述する新たな展開が生まれる可能性が高い。
2)隊列の選手確認
先頭交代の時にもう一つ注意しておきたいこと。ローテーションでは、先頭を牽き終わって隊列の中ほどまで下りてきたら、常に右側の最後尾を確認しておく必要がある。平地では、通常は先頭を牽き終わった選手から左まわりで順番に最後尾に戻るが、しかし、市民レースではいつも自分の前を走行していた選手が隊列の最後尾とは限らない。足がいっぱいになってローテーションから外れていることもあるからだ。
左側を走行中、最後尾をよく確認せずに、前走者だった選手が横に見えたあたりで隊列に戻ろうと見当をつけて走っていると、その選手はすでに切れていて最後尾が別の選手だったりすることもよくあること。この場合は慌ててスピードを上げて隊列に戻ろうと思っても、高速の時はタイミングをずらすと最後尾と車間が空いてしまいやすいので、それを詰めるのに使わなくともよい無駄な足を使ってしまう。これもローテーションから外れてしまう原因の一つ。
左側を走行中は隊列の中頃まで下がってきたなと思ったら、時々右後方を見ながら最後尾の選手をしっかり確認して事前にスピードを戻すタイミングを見計らっておこう。
3)次の展開に向けて注意しておきたいこと
レベルの高いクラスでは、先頭交代後は他にも気をつけるべきことがあって、それは、逃げの集団内では、左側のラインを走行中も隊列全体の動きをチェックしておかなければならないのです。先頭牽きが終わったからといって安心してはいけない。また別の展開に向けて新たな動きが生まれ、その集団は一度分解されて再編成されるかもしれないから。規則正しく交代していた隊列がバラバラになり、足が残っている選手達でまた新たな隊列が組まれるのです。
この集団再編成は、特に逃げの人数が多い場面ではしっかりと準備しておきたい。逃げ集団であっても人数が多いと全員がローテーションを回しているとは限らないので、途中で隊列に入れてくれる場合は、あまり後ろのほうには行かずにその場所で入れてもらおう。
人数が多い逃げ集団では、なぜ後ろのほうに行き過ぎてはいけないのか。それは、この集団をもっとコンパクトにしようとアタックが掛かった時に反応しにくいから。前のほうで中切れが起きたりすると、その場合、自分には足があっても取り残される可能性が高くなる。
集団が再編成されるもう一つのケース。数人のグループの場合であっても、終盤で牽けない選手が出てきた時は足の残っている選手達がアタックすることは当然考えられる。レースは強い者が勝つ世界。牽けなくなった選手を最後まで連れていく必要はないからね。
こういう展開の時にアタックが掛かりやすいポイントがあって、それは平坦路から上り坂に差し掛かった直後。あるいは他のメンバーの足がどれくらい残っているのかが判断しやすい上りに入ってから。頂上手前の数百メールは、急激にペースを上げる揺さぶりも予想されるので備えておきたい。
また、逃げの集団では、レースも終盤になってくると、レースを有利に進めるために潰したい選手の交代直後にアタックするのが常套手段。もしあなたがスプリントが強ければ、他の選手からマークされていて、交代直後を狙われてしまうかもしれない。こういう動きにもいつでも反応できるよう、先頭交代では足がいっぱいになるまで牽くのは絶対に避けるべき。逃げの集団内では、例え他のメンバーよりも自分が足がありそうだと思えても、常に牽きすぎないようできるだけ余力を残しながら走る戦術が得策です。