ローテーション
ローテーションとは集団内で一人一人が先頭を交代しながら走ること。集団で走る場合は先頭交代は走行マナーともいうべきエチケット、ロードレースでは作法といえる。しかし、市民レーサーの場合、普段から個人練習中心で集団走行に慣れていない方は、集団内での正しい交代方法をご存じないケースもあると思う。
チームに所属するなどしてしっかりとした走り方を身に付けていれば、レースに出る時も困惑することはないと思うが、練習はいつも一人、レース経験もまだそれほど多くないという場合、スマートなローテーションは難しいかもしれない。そこで、ここでは実践的なことも踏まえてローテーションの基本について書いていこう。もしローテーションにまだ慣れていないという方は参考にしてください。
ここでは個人参加の市民レースを前提に述べていきます。まず、集団の先頭交代では、その方法に大きくわけて2つの走り方があって、これはレース中の集団の位置とその大きさによります。
先頭交代は、選手の負担を均等にすることがまず大きな目的。集団走行では、集団の中に居ると体力が温存できるのは経験している方は誰もが知っていること。先頭走者は空気抵抗で負担が大きいため、負担が掛かるならそれを平等に分け合うのがサイクルスポーツでの暗黙のルールです。集団が大きければ、先頭交代後に前に出ても牽く必要はなく自分が先頭になったら横にラインを変えて2番手の選手にバトンタッチ。その繰り返しで集団はスピードを維持していく。大きな集団の場合はこれが基本。
もう一つの先頭交代は、大きな集団から逃げている小さな集団(あるいは数人のグループ)の場合。今度は最後まで逃げ切るためにも全員が積極的に牽かなければなりません。牽く時間は10秒から20秒くらいが理想的。10秒だと仮に時速45キロなら秒速12.5メートルだから距離は125m。20秒では250m。
牽く時間は、逃げの人数や選手の体力差、あるいは各選手の積極性によっても変わるでしょう。プロレースを見ると、終盤の局面では3人とか人数が少なくても15秒くらいで変わっています。これは筋疲労が蓄積しないよう交代時間を短くして早く回復させることを目的とした走り。もちろんもっと長い距離も牽けるけれども、牽く時間が長すぎると回復が遅くなり、スピードの低下にもつながるから、特に勝負掛けている走りの時はこのように一人一人が牽く時間はとても短い。
閑話休題。
市民レースに話を戻そう。特定のチームだけがローテーションを担うプロレースと違い、市民レースでは集団が大きくても小さくても、前のほうに出てくる選手は先頭を交代しながら走りたい。
ローテーションの最中に、時折、先頭の近くまで上がってきた選手が途中でラインを変えて後ろに下がり、先頭牽きを避けているケースを見掛けるが、この選手がレースに成績を求めて参加しているならこれは絶対にやってはいけない行為。前に出て牽きたくないならレースではローテーションに入ってはいけない。市民レースの表彰は個人を対象としている。自分だけズルして体力を温存しようなどもってのほか、ロードレースはきれいな走り方を心掛けたいものです。
ただ、選手の走り方は一人一様、仮に入賞の可能性がある選手が体力を温存したくて集団の後方で待機していたいなら、そういう走り方もあるでしょう。店長が昔所属していた実業団チームでもそういう選手は居ました。ただしその場合は、前のほうで展開があって逃げ集団が出来上がった時は確実にその逃げには乗ることができないし、積極的に展開される上のクラスのレースほど活躍の場も失われるでしょう。そして、もし若年層の選手がそういう走り方をしているとしたら、その選手の将来性は期待できないかもしれない。
さて、市民レースでも開催コースによっては上述した2つ目の展開になることもあります。例えば、上りで集団がばらけて、前のほうで小さな逃げ集団が出来上がった場合について、そのあとの状況を考えてみましょう。このリーディンググループが全員で協力してローテーションを回し続ければ、集団を振り切って最後まで行けるかもしれません。
しかし、足を温存させようと先頭を牽きたくない選手がいてローテーションがうまく回らなければ、せっかくメインバンチから抜け出せたとしても、おそらくこの逃げはそのうち崩壊してしまい、結局は失敗に終わるでしょう。最初から逃げるほどの体力が伴っていないならいざしらず、せっかく逃げを形成できたのなら、全員が持てる力を出し尽くし、協力しあいながら最後まで逃げ切って栄光の座を勝ち取りたいものです。それこそがロードレースのおもしろさ。