機材情報
自転車の空気圧表示について知っておきたいこと
空気入れをご購入いただいた方からこんな質問を受けました。フロアーポンプのゲージをみていて、この数字はどういう意味なんですかと不可解なご様子。
無理もありません。ロードバイクなら定期的に空気圧をチェックして乗るのが当たり前ですが、その方の自転車はいわゆるママチャリ。チューブは一部の量販メーカーで採用している米式バルブ。
おもにMTB向けのこのバルブを、なぜ普通車に採用しているのかはわからない(後述するエアチェックのためには親切ですが、、)。トンボ口金専用の空気入れではバルブに挟めないから、この自転車は空気が入れられないとお持ちになる方もいます。
米式バルブでも、アダプターがあればトンボ口金空気入れも使えるけど、その方はもっと使いやすいゲージ付きのフロアーポンプをお求めになりました。
ママチャリでスポーツバイクのように空気圧の管理をしている方はあまりいらっしゃらないかもしれません。でも、もちろんタイヤを長く使うためには、ママチャリでも空気圧はしっかりチェックしておいたほうがよいですね。
タイヤメーカーごとの空気圧表示
フロアーポンプの空気圧表示は、普通はbarとkPaか、barとpsiの組み合わせが多いと思いますが、なかにはkgf/cm2の併用とかもあります。圧力表示はメーカーごとに実に様々、ツールのゲージやタイヤもしかり。一つの規格に統一してくれると使いやすいんですが・・・。
お客様には1気圧が1桁のほうがわかりやすいだろうと、barのほうにインジケーターの針を合わせてお使いいただくようご説明しました。
で、タイヤの表示もちょっと気になったので、店内の在庫タイヤを調べてみました。以下ご参考まで。(この表示はタイヤメーカーによっては年式ごとに変わっているかもしれません)
タイヤメーカーはこの表示です。
・ヴィットリア:psi(bar)
・ミシュラン:bar(psi)
・ハッチンソン:BAR(PSI)
・マキシス:BAR(PSI)
・コンチネンタル:bar/PSI
・マヴィック:bar/psi
・シュワルベ:bar.psi
・ブリヂストン:kPa(psi)
・パナレーサー:kPa(PSI)
完成車メーカーのタイヤはどうでしょうか。
・ボントレガー:PSI/BAR
・スペシャライズド:PSI(BAR)
ちょっとためになる、空気圧数値の換算方法
バイクに空気を入れる時の圧力の単位はしっかり把握しておかなければなりません。ロードバイクに初めて乗られる方は意外にご存じないようです。
タイヤには必ず推奨気圧が表示されています。この気圧の単位はメーカーごとに表記方法は違うけど、確認した限りではスポーツバイクの場合はbarとpsiの2つが主流のようです。psiは全メーカーが表記しています。kPaを採用しているのは店内のタイヤではブリヂストンとパナレーサーだけでした。日本国内の表示規格で統一されているのでしょうか。国によって違うのかもしれませんね。
一方、普通車用のタイヤは「kgf/cm2」の単位が必ず表示されています。普通車は1kgf/cm2=1気圧だからわかりやすく、空気圧を確認する時に迷うことはないですね。
スポーツバイクに乗られている方は、もしもタイヤに表示されている推奨気圧がフロアーポンプの圧力単位と異なる場合は、以下のように覚えておくと計算する時に便利です。
[ 空気圧数値の換算式 ]
bar: 1bar≒1kgf/cm2
psi: 1psi≒0.07kgf/cm2
kPa: 1kPa≒0.01kgf/cm2
タイヤを選ぶ時に、特に指定がなければ、bar表示は1桁だからその表示がされているタイヤだと計算しなくても推奨気圧が確認しやすいと思います。
そういえば、昔のヴィットリアの廉価モデルはMAX10barとか表示されてました。でも、ロードバイクで10気圧はさすがに高すぎる。10気圧はトラックレーサーでの空気圧。
ポンプの空気圧表示で注意しておきたいこと
自転車のチューブには3つのバルブ形式がありますね。ロードバイクに多く使われる高圧対応のフレンチバルブ(仏式)、MTB向けのシュレッダーバルブ(米式)、そして普通車用のウッズバルブ(英式)の3種類。
ご存じのように、この3種類に対応しているフロアーポンプでは、ウッズバルブのチューブだけは付属のアダプターを利用しないと使えません。そこで、このバルブにゲージ付きエアポンプで空気を入れる時に一つ注意しておきたいことがあって、それは空気圧なのですが、空気を入れてる最中にゲージに表示される空気圧は、ウッズバルブだけはチューブ内の圧力ではないのです。
その時のゲージが示している空気圧数値は、厳密にいうと、ポンプ本体からバルブまでのホース内の圧力です。
フレンチバルブの構造
順を追って、バルブの構造とエアが入る仕組みについて書いてみます。今回の記事ではフレンチバルブとウッズバルブについて。
例えば、フレンチバルブの場合は、バルブ本体(バルブステムといいます)の中で、小さいネジが付いているバルブのコア軸部分が固定されていないので(ステムの筒の中でどういう構造かこちらの着脱式がわかりやすいです)、ホース内に圧力が掛かっている時は(空気を入れているとき)、コア軸に付いている先っちょの黒いゴム部分(コア軸のネジをカットして軸だけをバルブから取り出したこちらがわかりやすいです)がバルブステム内で開いていて、チューブ内の圧力とホース内の圧力がシンクロします。ゲージに表示されている空気圧はこのシンクロしている状態の圧力です。
ホース(ポンプヘッド)を抜くと、今度はチューブ内の圧力で、バルブステムの中でコア軸の黒いゴムが押し上げられて空気が抜けない仕組みになっています。
ちなみに、ヘッドを外した時に「バシュッ」と音がしますね。これはホース内(と一部ポンプのシリンダー内)に圧縮されていたエアが抜ける音です。チューブ内とシンクロしていると言っても、ヘッドを外せばさっきの黒いゴムは瞬時に閉じますから、バシュッでもチューブのほうはエアは抜けないので心配いりません。
フレンチバルブで注意してもらいたいこと
フレンチバルブでは、バルブの先端のコアネジを開けたり閉めたりしてエアを管理するわけですが、こんなに小さくてもこれはけっこう大事な部品。これがないとフレンチバルブのバイクは空気を入れて走ることができません。このネジが付いていなかったら、空気が抜けている状態ではコア軸はストッパーがなくなってチューブの中に落ちてしまうからですね。
コアネジはエア注入後は完全に閉めてください。開いていると走行中の振動で漏れたりします。空気圧が低い場合は特に漏れやすい。このネジは最後まで緩めても一旦止まって外れることはないですが、その状態だと曲がってしまう可能性もあるのでご注意ください。けっこう見掛けます。左の写真の状態。曲がると締めてもエア漏れにつながります。右の状態。
それと、コアネジを回す場合は軽い力で回し、一旦止まったところでそれ以上無理やり捻ると外れるのでご注意ください。一度取れたら戻せません。無理に戻してもまた外れてしまいます。こちらもまれに見掛けます。くれぐれもご注意を。
長期間バイクを使用しない時に気を付けたいこと
余談ですが、少し深掘りして書いていきます。スポーツバイクに初めて乗られる方にはいつもご説明していることですが、たぶん、知っておくとタメになると思うので、長くなるけど関心ある方は以下もご参考にしてください。
この上の見出し写真はコアネジの役割を説明するため、バルブコアの先っちょに付いている黒いゴム部分はどちらも閉じている状態ですが、コアネジが下に押されるとこの黒いゴムが開きます。ポンプで空気を入れている時にはシリンダーからの圧力でこの動作をしていることになるわけですね。
でも、長期間空気を入れない状態が続くと、このゴムが密着してしまい、必ずではないけど密着すると空気を入れることができません。冬に乘らずにひと冬過ごしたバイクはくっ付いているケースが多いようです。密着度合いが強いと高圧のコンプレッサーで入れようと思っても入りません。これを回避するために、ポンプをセットする前に一度コアネジを押してゴムを開いておいてください。操作は、ただ、上から「ブシュッ」と押すだけ。
こうすることにより最初からスムーズにポンピングできます。経験上、1ヶ月以内だったら大丈夫だと思いますが、しばらく乗っていないなという方は、ポンプをセットして入らなかったらショックだと思うのでお気をつけください。
コアネジを押すたび「ブシュッ」と1回で約1気圧抜けます。これはポンピングのストロークでおおよそ1回分なので(廉価品除く)、1気圧くらいは気にならないですよね。
英式バルブの構造と、このバルブの自転車を使用する上での注意点
さて、ウッズバルブです。わかりやすく英式バルブでいきます。虫ゴム式の英式バルブの場合は、空気が流入した直後にゴムの弾力で常にバルブの穴が閉じてしまうため、ポンピングの回数が増えるほど、チューブ内の圧力とホース内の圧力に差が生じてしまいます。
ゲージに表示されている数値は、あくまでも、先ほどの「ポンプ本体からバルブまでのホース内の圧力」だからです。英式バルブでは、構造的にバルブのところで、チューブ内とホース内での空気のつながりがシャットアウトされてしまうんですね。
この圧力差でゲージの表示数値ほどチューブに空気は入っていません。というか、ゲージの表示空気圧とチューブ内の空気圧に相関関係はありません。実際に英式バルブでエア注入を試してみるとよくわかります。もし、フロアーポンプをスポーツバイクと普通車兼用で使う場合はご注意ください。
英式バルブの自転車にゲージ付きポンプで空気を入れる時は、ゲージは一切見ずに手で直接タイヤを押してみて、沈まないくらい固ければ空気圧はそれでオッケーです。
普通車でも定期的なエアチェックをおすすめします!
もしも、普通車の英式バルブでもスポーツバイクと同じように正確に空気圧を測りたい場合は、エアチェックアダプターを使うとよいです。パナレーサーなど、タイヤメーカーが出していると思います。これは英式バルブをシュレッダーバルブに変換するアダプター。使うのは真ん中と右側の部品。
低圧で乗っていると後輪のチューブが異常に早く傷みますから、普通車でもゲージで定期的なエアチェックはおすすめです。チューブが傷むのは、空気圧が低いと走行中にタイヤ内でチューブが動いてしまい、サイドが擦り切れるため薄くなったところから穴が空いてしまうんですが、駆動輪である後輪で顕著です。低圧走行はバルブ付近もかなり危ない。
これらの症状は、高圧にして乗るロードバイクではめったに見ません。(めったは、街乗りのロードバイクルック車)
ほとんどが普通車で起こっているこのパンクも、空気圧を定期的にチェックしておくことで解決できます。タイヤのほうも、空気をしっかり入れて弾力を保っていると、経年劣化でヒビ割れが生じてしまう時期を延ばすことができるのではないかと思います。
仮にゲージ付きポンプやエアチェッカーを使わなくても、どんな自転車でもしっかり空気を入れて乗ることが自転車を長く乗る第一歩ですね。
【ワンポイント アドバイス!】
ちょうどさっきのバルブ写真を撮っている時に気付いたことがあって、注意してもらいたいのでフレンチバルブにエアを入れるときの参考にしてください。特に、初めてロードバイクに乗られる方はご注意ください。通常はバルブの先端なんて気に留めないでしょうから。
フレンチバルブは、「ポンプの空気圧表示で注意しておきたいこと」見出しのバルブ写真のように、まれにコア軸にバリが出ている時があります。このバリにはお気をつけください。バリはラジオペンチなどですぐに取れると思います。指で触ってみて引っ掛かるようだったらヤスリで整えておきましょう。
バリはキズ防止のために、指もですが、携帯ポンプなどゴムパッキン仕様のバルブヘッドの時は特に注意したほうがよいです。固いバリはゴムが傷付く場合もあるからですね。新しいチューブを用意した時は、念のため、パッケージから取り出して確認しておいたほうがよいかと思います。