機材情報
11S直付け式フロントディレイラーのサポートボルトについて
前回の記事では、初めてご自分でバイクをメンテナンスされる時にもスムーズに作業ができるよう、フロントディレイラーについて初期の調整方法からそのポイントとなる部分について書いてみました。
フロントディレイラー(以下FD)の調整はメンテ作業の中でも特に難しいという声もお聞きします。でも、定期的に交換が必要なシフトワイヤーを交換する場合なども、このセッティングさえ抑えておけば調整作業には失敗しないはずです。
そして、そのFDのなかでも直付け式の場合は、前回も少し触れていますがサポートボルトという部品がとても重要な役割を担っています。今回はこのサポートボルトについて書いていきます。
バンドアダプターを使う場合もサポートボルトが必要か
まず、前回、直付け台座がないフレームにバンドアダプターを利用して直付けFDを使用する場合に、旧型11Sと新型11Sのマニュアルでは、それぞれサポートボルトの必要性についての説明が違う点について、これはどうしてなんだろうという疑問で終わっていました。サポートボルトとはプレートの上に見える2mm頭の小さいボルトです。
で、先日シマノと話す機会があった時についでに聞いてみました。結論から言うと、やはり新型のほうが作動する時の力が強くなっているので、せっかくサポートボルトという機能が備わっているなら使ったほうがよいですねという認識のようです。
加えて、バンドアダプターもシマノ純正品ならFDの固定箇所は一点ですが、アクセサリーメーカーによっては、上下移動できるタイプのバンドアダプターもありますから、固定力不足を補う上でもサポートボルトを利用したほうがよいのだと思います。シマノとの会話の中には、直接的な話ではなかったけれどもそういうニュアンスの説明があって店長はそのように受け止めました。他メーカーに関することなので、もちろんマニュアルには記載できない内容です。
バンドアダプターを利用するメリットとデメリット
ちなみに、バンドアダプターを使う時も、上下移動できるタイプはFDの上下位置を調整する時にバンド自体の固定は1回で済むから作業が楽ですが、アップダウンの多いコースのトレーニングなどでハードにバイクを使用する時にはFD側の操作になんらかの支障が出るかもしれないというデメリットもあるわけですね。これは店長も経験あります。
以前クロモリバイクでFDをバンド式からスマートな見栄えの直付け式にするため台座を溶接して付けたことがありました。でも、直付けFDに換えてから、橋を渡っている時とかアウターローの状態で橋のつなぎ目などピョーンと飛び越えるときに、FDの外プレート先端にチェーンのアウターリンクが引っ掛かってFDがずれるトラブルを何度か経験しました。飛んだ瞬間に足が少し動いてチェーンが逆回転気味になったのでしょう。
まあ、もともとこの組み合わせで走らなければ問題ないのですが、アウターを踏んでいる時は向かい風などでローまで使うこともあるからですね。きつい時にできるだけフロントを変速したくないのはわかってもらえると思います。(ちなみに28T以上ではアウターローの組み合わせは不可)
今は当時よりも多段化が進みチェーンも薄くなっているのでそういうトラブルはないかもしれませんが、それほど直付け台座に止める方式はバンド式と比べて固定力が弱いということです。なので、シマノが直付け式のFDにサポートボルトの機能を付加したという意味はよくわかります。
サポートボルトを使う時のバックアッププレートの貼り方
さて、バンドアダプターを使うときは、フレームの形状によってはサポートボルトがフレームまで届かないというイレギュラーなケースもあって、その場合は初期調整がバンド式FDと同じ調整になりますから、必ずシマノ純正品を使ったほうがよいと思います。
バンド式のFDと同じ調整というのは、外プレートに傾きを設けないということですね。最初からギア板とプレートを面一に合わせます。
マニュアルではサポートボルトを使う場合は、外プレート後端の傾きをギア板から0.5~1.0mm内側になるように調整と記載されていますが、これはサポートボルトをフレームに加圧してFDをしっかりと固定するためだけの作業なので、ボルトがフレームまで届かない場合はバンド式と同じ調整になるわけです。
エアロ形状でよっぽど薄いとか、そういうフレーム以外は届かないというのはめったにないので、通常はサポートボルトが使えるはずです。その場合もバックアッププレートを適正な位置に貼るのは慣れないとけっこう大変ではないかと思います。
そこで、うまく貼るコツをお教えしましょう。まずリアホイールは外して、上の写真のように片手でテープが貼っている側の先端をラジオペンチでつかみ、位置を決めてからもう片方の手でドライバーなどで押し当てるとうまく貼れます。手で貼るのは失敗のもと。店長も最初の頃はテープが斜めになったり、落としてしまったり手でプレートを持ってやっている時は何度か失敗しました。
一番注意しないといけないのが、貼る作業は一発で決めること。この3Mのテープは小さくても粘着力が強力ですから貼ってしまえばあとは安心ですが、もし貼る位置を失敗して剥がしてしまうと粘着力が落ちてしまいます。その場合は新しいものに変えたほうがよいでしょう。裏紙を剥がしたあとも接着面を手で触ってしまわないよう注意してください。ラジオペンチでつかんでいる時も落とさないように慎重に。
プレートは、このように曲がったのと真っすぐなのがFDのパッケージに2種類付属されるのでフレームの形状によって使い分けます。そして、バックアッププレートを貼る向きですが、テープが手前に来るようにしてテープのところにサポートボルトが当たらないようにします。
インナーケーブル装着時の注意点
最後に、フロントディレイラーに限らず、リアディレイラーを交換する時とか、定期的にワイヤー交換をする時とかに、インナーケーブルを装着する場合の注意すべきことを上げておこうと思います。
11スピード(11S)になってからは、STIレバーにインナーケーブルを装着する作業がずいぶん楽になりました。10Sはケーブル穴の入口がブラケットの下側だったからけっこう大変でしたよね。新品レバーを装着する時は最初に通しておけばよいけど、ワイヤー交換の時は裏から作業することになるのでちょっと面倒でした。作業台に載せてもやりづらいのでバイクをひっくり返して作業している方もいたかもしれませんね。
11Sになってからはブラケットの横にケーブル穴が移動されたので、出口からスムーズにケーブルを出せるようになったと思いますが、ただ、ブラケットのゴムカバーのせいでカバーをめくっただけでは、カバーの折り返し部分が11Sも10Sもちょうど入口付近に被さって作業がしづらいです(なので、写真のようにもうひとめくり必要)。そのため特に10Sではユニット内でのケーブルを通す位置を間違えないよう注意が必要です。10Sはユニット内の作りがけっこう間違いやすい。
ケーブルのルートが正常で出口からしっかりケーブルが出ている場合も、タイコ部分がユニットに収まるまではレバーは動かさないほうがよいです。というか動かしては駄目です。
できれば、ディレイラーにケーブルをセットして初期伸びを取るまでは、ケーブルを通す前に初期位置の状態を確認した後は一切レバーは動作させないほうがよいですね。もしケーブルのタイコがユニットにしっかり収まっていない場合はややこしい状態になるからです。実は店長これも昔数回経験したことがあって、正常に戻すのに余計な時間が掛かります。
ディレイラーの調整作業で注意すべきこと
タイコ部分がしっかりユニットに収まっていることを確認して、ケーブルを通したらここから調整作業に入ります。ただ、タイコがユニットに収まっていても、ほぼ確実に調整作業に入る段階でレバーを動作させるとケーブルに緩みが出てくるので、調整作業が終わるまではケーブルの固定ボルトは仮止めにしておきます。
インデックスの調整で、時には何度も緩めたり締めたりケーブルの固定を繰り返すこともあるかと思いますが、仮止め状態にしないでその都度本締めくらいのトルクで固定しているとケーブルの破損につながります。
これは新車のバイクをメンテナンスで預かる際にもたまに見受けますが、ご注意ください。昨年、新車購入後まだ数十キロしか走っていないというロードバイクを買取りした時にも、ケーブルの先端がすでにボロボロの状態になっていたケースがありました。
こういう場合は、ケーブルが外装式ですとアウターに余裕があれば数センチ切って調整することができます。でも、写真のような内装式だったらインナーを抜かなければアウターを切ることもできないので、内装ケーブルでは一切手を加えることができません。
インナーキャップも取れて固定ボルトのところまでケーブルがほつれていたら、固定ボルトを緩めて再調整することが難しくなる場合もあります。ディレイラーを調整する時は、ケーブルの締め付けトルクにも十分注意してください。
以上、ご説明が長くなってしまいましたが、シフト関係をご自分でメンテナンスされる場合に参考にしてみてください。