機材情報
11速ロードホイールへの8/9速ギアと10速ギアの装着方法
前回は、ロードバイクホイールに装着するカセットギアとフリーボディの互換性について、各スピードごとの適合性を紹介しました。今回は、11速カセット装着ホイールへの8/9速カセットギアと10速ギアの装着方法についてです。(以下、カセットギアは「ギア」、スピードは「s」と表記)
落車でホイールが壊れてしまった場合や、パーツ換装でコンポはそのまま使いホイールはアップグレードしたいとお考えの方にもご参考になるものと思います。
その前に、先回の書き出しで気になることと言っていたのは、クラリスの8s用FH-2400ハブのフリーボディに、1.85mmスペーサーが装着されていたこと。後述しますが、このスペーサーは11sホイールで使用するものです。どのタイミングで間違ったのだろう。余分なスペーサー装着や、反対に必要なスペーサーが未装着の場合は(たまにあります)、機材故障の原因になるので気をつけたいところです。
11sロードホイールで使用する2枚のスペーサーの組み合わせ
それでは本題にまいりましょう。
まず、11sホイールを10s以下の環境で使用するためには2枚のスペーサーが必要です。1.85mmと1.0mmで、どちらも通常ロースペーサーと呼ばれますが紛らわしいのでローは入れずに数値で呼びます。1.85mmは11sホイールに、1.0mmは10sギアに付属されます。
この2枚は形状も違っていて、1.85mmには後述するCS-4600用に溝が切られています。装着の向きは、表と裏があるので溝をギア側にします(反対では入らないけど)。1.0mmはどちらでもよいけど、一応、表面の加工が違うので滑らかのほうをギア側にして装着させます。
で、ここから大事。11sホイールに各スピードのギアを装着するには、この2枚のスペーサーの組み合わせで対応します。以下のとおり装着してください。順番も。先回のフリーボディの長さと一緒に覚えていれば、より整理しておきやすいのではないかと思います。
・9sギア
11sフリーボディは9s用ボディよりも1.75mm長いため以下の方法
→ 11sホイールに、1.85mmスペーサー + 9sギアを装着
・10sギア
10sギアは9s用フリーボディに1.0mmスペーサー装着して使うため、さらにこれを追加
→ 11sホイールに、1.85mmスペーサー + 1.0mmスペーサー + 10sギアを装着
・8sギア
8s用フリーボディは9sと共通なので9sと同じく1.85mmスペーサーのみ使用
→ 11sホイールに、1.85mmスペーサー + 8sギアを装着
・7sギア
使用不可
11sホイールで7sギアは使用できるか?
ここまでは、この装着方法を知っている方には当たり前の内容。スルーしてかまいません。でも、以前Seesaaブログで店長日誌を掲載していた時に触れていたこの話題にけっこうアクセスが多かったものですから、まだ知らない方も多いのではないかと、今回はより詳細にまとめてご紹介しています。
ちなみに11sホイールに使用できるのは8sまでです。7sギアも1.85mmスペーサーを入れれば使えるという記事を、どこかで見掛けたことがありましたが、7sと8sはチェーンは共用できますが、7sは11sホイールにはデフォルトでは使用不可となります。ご注意ください。
ギア1枚の厚みが、7sは1.85mm 、8sは1.8mm。その差0.05mmだからチェーンは共用可。これがギアの全幅となると、スペーサーが単体0.15mm厚みが増して、7s全幅が31.85mm、8sは35.4mm。カセットボディの互換性はありません。
【追記】どうしても7sギアを現行ホイールで使いたい時は?
その後、7sギアのロードバイクでホイールを交換しなければならないケースがあって、在庫の10s対応ホイールに、イレギュラーな方法ですがスペーサーを組み合わせることで装着することができたのでご紹介します。レギュラーな方法ではないので、あくまで紹介のみです。実践する方は自己責任で。
使うのは1.85mmのスペーサーが2枚と1mmが1枚。「1.85mm+1mm+1.85mm」の順番でセットした後に7sギアを装着すると、10s対応ホイールでも使うことができました。ポイントは1mmを真ん中にして、7sギアの凸部を外側の1.85mmの凹に合わせて装着すること。これでオッケーです。本来7sはエンド幅(OLD)126mmホイール対応ですが、OLD130mmホイールで片側2mm増し程度はチェーンラインが変わっても変速に支障は出ないようです。
WHEELS MANUFACTURING からも10sまでのフリーボディに対応するスペーサーが出てますが、これは5枚セットの販売で、ネットで探すとスペーサーにしてはけっこうな金額なのでこちらの方法がよろしいかと。
この方法でさらに1.85mmを追加すると11Sホイールにも使えるということになりますね。ギアとスペーサーの厚みを計算すると、トップギアの外端が1.65mm分ボディーの外側に出ることになるため付けられないことはないだろうけど、やったことはないのであくまで計算上でのこと。ロックリングのネジ山がしっかり確保されるかは装着してみないとわからない。
ロードバイクの10s使用ホイールを、11sコンポで使いたいときの秘策
今お使いの10s以下のコンポを11sホイールで使いたいという場合は、上述のとおり対応できます。しかし、その逆は、カセット式のシマノ製では通常は物理的に対応不能。
でも、コンポを10sから11sにアップグレードした時に、ホイールはそのまま継続して使いたいというケースもあるでしょう。そんな方に朗報です。実は、TOKENのカセットスプロケットならそれが可能なのです。お気に入りの10sホイールで11sコンポが機能します。(シマノFH/WH-7800除く)
しかも、TOKENのフリーボディは、シマノとカンパ、どちらのスプロケットにも対応するコンパチブルボディもあって、これはシマノからカンパ、カンパからシマノに換装した際にフリーボディだけ交換することで、ホイールはそのまま利用することができるスグレモノ。
これはTOKEN独自のスプライン加工によって共用できるのです。TOKENのホイールをお使いの方は、コンポ換装の時にこれでずいぶん選択肢が広がりますね。
ロード用10sホイールを11sコンポで使える秘策 part 2【番外編】
通常は上記のように、高額のTOKENを使わなければ11sコンポを10s対応ホイールで使うことはできません。でもシマノ製品で、11sには本来は対応していない10sまでのホイールを11s仕様で使うことがまったくできないわけでもありません。通常外の方法で。限定された使用環境にはなりますが以下の方法なら可能です。
それは11-34Tモデルの「CS-HG700-11」もしくは「CS-HG800-11」を使う方法。これはシクロクロス向けに用意しているギアで、このモデルはアームの仕様により10s対応ホイールにも取り付けできます。ただし、ワイドレシオの仕様ですから、リアディレーラーはショートケージは使えません。ミディアムケージの対応になります。このギアを10s対応ホイールに使用する時は、ロースペーサーは使わずダイレクトに装着します。
ギアの歯数は「11-13-15-17-19-21-23-25-27-30-34T」。ローギア34Tは、コンパクトドライブのギアクランクでは1:1でさすがに軽すぎるので使うことはないかもしれませんが、保険として考えておけばどんな急坂に遭遇しても安心ですね。11-27Tなら9s感覚で使えば違和感はないと思います。レースに使う場合も30Tまであればかなり実用的。
そして、実はもう一つ、グラベルロードの場合は別の方法で対応することもできます。GRXコンポのRX600以上では、MTBの2019モデルまで出ていた11sギアを使って10sまでのホイールを使うことができます。こちらは、もっとワイドなギア設定ができますね。対応ギアはCS-M7000や、CS-M8000。
MTBの11sギアは、ギアと間座の厚みはロード用と同じですが、ロード用としてはもちろんGRX以外では使えません。MTB11sはローギアが最小40Tとビッグギアなので、MTBのリアディレーラーとはスラント角も違うしロードコンポでは使うことができないのです。
11sコンポへの換装の時など、どうしても手持ちの10s対応ホイールを使いたいという時に参考にしてみてください。
10sカセットギアを11sロードホイールで使用する時の注意点
シマノのカタログには、11sホイールの「対応カセットスプロケット」欄に『10スピードでの使用には、追加スペーサーが必要です』とありますね。これが装着方法でご紹介しているスペーサーを指しています。
そして、R501のほうには8/9/10スピードと記載がありますが、それ以外の11s対応モデルからは8/9は外れています。でも上述のとおり問題なく使えますので、8/9スピードご利用の方もご安心ください。
さて、10sギアを11sホイールへ装着する際に、いくつか気を付けておかなければいけないことがあります。
まず、1つめ。10sコンポの中でもティアグラCS-4600だけは仕様上1.0mmスペーサーが必要ありません。入れたらロックリングが浮いてしまいます。CS-4600は1.85mmスペーサーとの装着位置も注意が必要です。ギアにはスペーサーの装着図が付属されているのでご参照ください。向きは前述のとおりです。
2つめ。10スピードで1.0mmスペーサーが必要ないケースがもう一つあります。それはジュニアのギア規制の対応でもよく使われるCS-6600の14/16Tトップのカセットギア。
ジュニアクラスの選手は、6700コンポからなくなったこのトップギアを、6600モデルから代用して使おうとする可能性が高いと思いますので、指導者や保護者の方は、カセットギアを装着するときは注意してあげてください。
ただし、16Tトップギアはフレーム側の仕様で使えない可能性もあるかと思います。UCI(に加盟するJCFも)のルールではジュニアは17歳と18歳。この年齢では16トップは使わないと思いますが、それ以下の年齢でもしバイクを新調される場合にバイクを数年使い続ける目的で16Tトップギアを選択する場合は、チェーンがフレームに干渉しないことを確認できてからのほうがよいですね。