パーツ換装
ミックスコンポーネントで8Sのクロスバイクを10Sのロードバイクに仕様変更
パーツ換装のご依頼をいただく時に、たまにお受けするのが、クロスバイクのフラットバーをドロップハンドルに交換するロードバイク化のご注文。
まずは注文をお受けする時にご予算をお聞きして、その予算に合った内容で換装仕様をご提示するわけですが、今回は在庫している中古部品で組むことになりました。バイクは納車するまで1週間ほどお預り。
ミックスコンポーネントとなってしまった原因
最初はティアグラの10速で揃えることができると思って倉庫に出向いて在庫部品を確認したところ、いくつか欠品していてリアディレイラー(以下RD)も油汚れでちょっといただけない。洗浄すればきれいになるけどキズもありそうだし、結局、当初予定していたティアグラは中止。
そこで、買取フレーム用に用意していた105で組むことにしました。現在中古のロードフレームはカーボンが1台、アルミが2台ですが、シーズン中は時間を取ることができないので冬に完成車として組む予定のフレームです。(105のコンポが1台分なくなったので、今後、1台はフレーム単体で販売予定ですが、ご希望があればお声掛けください。)
で、ここで、105に変更したことでミックスコンポとなってしまった原因となる問題が発生するわけですが、左のSTIレバーがどうもよろしくない状態で、巻き取りレバー側でユニット内部の部品が一部破損しているようで正常に機能しません。クリックの感覚は同じだけどアウター側に保持できないようです。
そこで、左側だけST-4600を使うことになりました。もちろんお客様ご了解のもとでの使用。レバーはリアが105、フロントはティアグラで左右が違ってもグリップの感触はあまり違和感ないので機能的にも使用する上でも特に問題なし。
ちなみに、もう1セット、同じ10速ティアグラのST-4700も在庫ありましたが、これは4700シリーズのみで使える単独コンポで、他の10速コンポとは互換性がありません。フロントだけは使えるかもしれないけど、試したことはないし何か不具合があっても困るので今回は旧式の4600レバーを使いました。リアもセットで在庫があったけれども4700は稼動域が違うのでこの組み合わせでは使えない。
チェーンの磨耗具合を専用ツールで確認
使用するコンポが決まったところで、チェーンはミックスついでに上位モデルの10S対応CN-7800デュラエースにアップグレード。こちらも中古ですが、チェーンチェッカーでチェックしたところ、伸び率はまだ0.5%ですからまだまだ何ら支障なく使えます。
チェーンチェッカーは、店長はパークツールを利用しています。パークツールのチェッカーは、縦の伸びではなくチェーンの各部が磨耗して起こる横のガタを数値化して計測しているツール。ですから正確には伸びの数値ではないですが、数値化しているので磨耗具合を判断しやすいです。
チェッカーの計測値は磨耗していない新品でも0.25%、0.75%を超えたらそろそろ交換するタイミングで、1%は即交換です。いつごろ交換したらよいのか、専用工具がないとチェーンの消耗度合いはわかりにくいですね。5,000kmを目安に定期的に交換されるとよいと思います。
チェーンを交換する時の注意点
さて、先回もチェーントラブルの記事でチェーンの交換について触れていましたが、ご自分で交換する時の注意点をいくつかご紹介します。よければ参考にしてみてください。
まず、新品チェーンに交換する場合について。今回はコネクティングピン(以下、コネクトピン)を使うときの装着方法です。
チェーンの長さ(リンク数)は、フロントがアウターギア、リアがトップギアの位置で、RDのガイドプーリーとテンションプーリーが垂直になる状態が適正なリンク数ですが、チェーンの長さが決まり、余分な分を切る時は必ず下側で行います。そして切る箇所は、左側で端がインナーリンクになる位置で切ります。
これは、一度アウターリンクにピンを圧入すると、その穴は広がっているので強度が落ちてしまうから。チェーンをつなぐ時に、新品のチェーンはまっさらなアウターリンク側を使うほうが強度を高く保持できるので、必ず右をアウターリンクにしてつないでください。
説明しやすいように、実際に新品チェーンと中古チェーンを計測してみました。コネクトピンの外径と、アウタープレートのピンを挿入する内径です。
わかりやすく番号を振ります。ピンだけ、右が一度挿入してから抜いたコネクトピン①。真ん中が未使用のコネクトピン②、左がもともとの圧入ピン③。
①の外径は3.7mm、②はガイドが3.5mmで下の太い部分が3.7mm。②と③のちょっとだけ太くなっている端っこの部分は3.8mmで、ここがアウタープレートに圧入される部分となります。
圧入後のアウタープレートの穴も実測3.7mmでした。まっさらなアウタープレートは3.55mmです。図で見たほうがわかりやすいので、計測した時のメモを載せてみます(走り書きの汚い字で恐縮です^^)
ノギスでの計測ですから、真円測定のできるマイクロメータとは違い測定箇所で誤差が生じていると思います。でも、アウタープレートの穴は圧入前と圧入後ではあきらかに内径が違うことから、まっさらなほうがより圧入強度が高くなるというわけですね。
ですから、新品チェーンはいつもアウターリンク側でつないだほうがよく、アウターリンクの向きも、チェーンを張った下側で進行方向の逆向きにアウターリンクを連結するようにつなぐとチェーン切れのトラブル対策にもなります。
ところで、番号を振った写真の右端に写っている真ん丸のわっか、これは何かご存じですか?
専用工具でチェーン交換を経験した方ならすぐにわかると思います。チェーン切りの工具に溜まっていくわっかと同じもので、いわばチェーンを切った時のピンの切りくず。この切りくずの正体は、先ほどの写真で②と③のちょっとだけ太くなっている端っこの0.1mmが欠けた時にできたものです。切る時に「ガキッ」という衝撃がありますね。あれです。①は上側が抜いた時のガキッでわっかがなくなっている状態。
不思議なのは、ピンを抜く時に、そのわっかが欠ける前は3.8mmのピンが圧入されていたわけで、ピンが外れたあともアウタープレートの穴はピンの外径と同じ3.7mmなのですが、圧入前の3.55mmがピン圧入後に3.7mmに広がるのはわかるけれども、なぜそれ以上(3.8mmに)広がらないんだろう?
コネクトピンの連結について
最後に、コネクトピンを使って一度連結したチェーンを切って再連結させる場合に注意すべきことを挙げておきたいと思います。
まず、絶対に一度コネクトピンで連結した箇所で再連結してはいけません。この記事では比較と確認のために挿入したコネクトピンを抜いていますが、使用中のチェーンでは、ギア歯数を変更する時などチェーンの長さを変える必要がある場合に再連結する時は、もともと圧入されていたピンを切って連結します。
これは、同じアウタープレートにピンを何度も圧入させるのはよくないし、もともと圧入ピンよりも、図のようにコネクトピンのほうが外径が太いから、何度も同じところで連結するとチェーン切れの危険性が増します。
さらに、挿入されているコネクトピンからも離れた箇所で連結したほうがよいですね。チェーンは連結した箇所が一番強度が弱いから。弱いところにわざわざ集中させる必要はないと思う。
では、なぜそこが弱いのでしょうか。もともと圧入ピンと、連結したコネクトピンを両方抜いてみたらわかります。抜く時の固さというか抵抗がまったく違います。機械のプレス圧入と、人の手を介した圧入の差です。コネクトピンは人の力で圧入できるように、材質も硬度が低いんじゃないでしょうか。憶測ですが・・。