機材情報
ロード部品交換の時に注意しておきたい駆動系の製品不具合について
乗られているバイクの修理で部品が壊れて不具合を起こしていたことはたびたびありました。でも、組み付け前の買い取り部品で、最初から壊れている不良品だったのは初めてです。
ひとつは装着後に気付いたリアディレイラー、もうひとつは買い取り後にクリーニングしていた時に発見したギアクランク。いずれも外観だけでは判断できず、特にギアクランクはこちらの知識不足で致し方ないとはいえ、とても残念。
それでは、2つの部品がどういう状況だったのか見ていきましょう。ご自分でバイクを組まれる方は、ネットで中古部品を調達して換装されるケースもあるかもしれません。その際、店長と同じ轍を踏まないよう、どうぞ参考にしてください。
リアディレイラーのチェーンテンションに異状発生
中古バイクを1台組むために、足りなかった部品が揃ったので、まずはリアディレイラー(以下RD)を装着してみると、トップの写真でわかるようにあきらかにチェーンの張りがおかしい。
もちろん、チェーンが長すぎるわけではありません。チェーンは継続使用ですが、消耗具合もチェッカーで測定すると0.5%程度なのでまったく問題ない。RDは交換品で、これまでのRDはチェーンは切らずにプーリーを外して交換しているためチェーンはそのままの状態です。
通常、写真のインナートップでも、RDにチェーンを通したらもっとピンと張っているもんです。原因はRD自体にありました。テンションを調節するためのボルトが取り付けられているプレートで、下の展開図②の左側にある鉄板です。
このプレートは正式名称はないようですが、シマノでは「ストッパープレート」と言っているようです。今回は鉄板でいきます。これはRDを装着後にエンドと本体の間にあって、鉄板の左側のEリングで固定されて本来動かないものなんですが、この不具合RDは装着後も手で簡単に動きます。
写真の上が本来の正常な固定位置、下が動いてはいけないのに手で簡単に動かせる状態。これではアジャストボルトでギアとプーリーの間隔を調整することができません。
そこで、一旦RDを外して、今度は鉄板を手で回してみる。少しグラグラする。最初はこの鉄板グラグラがチェーンの弛みの原因とは装着するまで知りませんでした。
というか、展開図をみるとわかりますが、本体に組み込まれる①の真ん中にバネがありますね。このバネの先端にある出っ張りが外れているか、もしくは折れていることがグラグラの原因ですが、たぶん折れているのだと思います。
分解していないから断言はできませんが、外れている場合は横方向のグラグラ感がもっと大きいと思うから。まあ、折れているにしても外れているにしても、使えない部品をわざわざ分解してまで確認しても仕方ないので、とりあえず別のRDを用意することにしました。
鉄板グラグラは初めてのケースで、まさかこんな状態になることがあるなんて考えもしなかったです。今後RDを買取りする時は、常にストッパープレートの固定状況を確認することにしよう。
シングルギアで使っていたギアクランクに異状発生
今回の不良品で、気持ち的にもっとダメージが大きかったのはギアクランク(以下FC)のほう。4700コンポをフラットバーでお使いになっていたということで、価格交渉があった時に、FCとFDとRDの駆動部品3点が揃っていたため少し頑張って査定額を上げて買い取りさせて頂いたのですが、なんとメインのFCが、ギアの固定ボルトが供回りしていて使用できない状態だった。
インナーギアを外してフロントシングルで使っていたということでしたが、写真のとおり固定ボルトが2個外されていたので売却でお持込みの時にダブルに戻そうとしたのかもしれません。
シマノのFCで裏側から締めるだけのモデルの場合、アウターギアには雌ネジのナットが圧入されています。強固に固定されている仕様ですが、圧入されたこの雌ネジが動くとこのように供回りとなってしまいます。こうなるとこのクランクは一切使えません。
ただ、今回雌ネジが動いて供回りとなってしまった原因は、雌ネジの固定力そのものが原因ではなく、クランクとギアの装着状況を観察すると他に原因があると推察されます。
装着のギア固定ボルトはシングル用に替えずにそのまま使っているようです。ダブル用のボルトなので、インナーギアの厚みがなくなった分、雌ネジ側の締め込みがいっぱいになって、アウターギアがクランクから浮いて段差になっています。クランクとギアはグラグラの状態。
ボルトが外せず2個残っていたということは、最初からこのグラグラ状態で使われていたものと思われます。クランクとギアの固定がイレギュラーでぐらつく状態が続いたために、雌ネジが動いてしまったのでしょう。この状態ではいくら雄ネジを回してみても、空しくクルクル空回りするだけですね。
これまで経験なかったので、買取りの時もなぜ固定ボルトが2個だけ残っているのだろうと不思議に思いましたが(その時に聞けばよかった)、まさか供回りの状態とは予想だにしなかったです。
レギュラー状態で使用している場合は、こういうトラブルは起こらないと思いますから心配いりません。ただ、雄ネジと雌ネジの両面をツールで固定して装着する仕様と違い、片面からではトルクが足りないと緩む可能性もあります。点検整備の時もけっこう緩んでいるケースを見掛けます。ここ↓の箇所。
以前、フロントの変速がおかしいと持ち込まれたバイクも、原因がチェーンリングの緩みにありました。固定ボルトは4本中1本がすでに外れてなくなっていました。
この仕様が出始めた当時は、単体販売の部品でもトルクが足りないように感じたので、組付けの際に店長はその都度増し締めしていたものです。その後メーカーでも見直したのか、持込みバイクの点検でも、ここ数年のモデルを装着しているバイクの場合はしっかり固定されています。
ただ、使用状況によっては緩んでくるとも限りませんから、1年に一回とか定期的な点検が必須ですね。
ロードバイクのネジの緩みは重大事故につながる可能性もあるので普段から注意しておかなければなりません。特にディレイラーハンガーも緩みやすい箇所ですから、ここは数ヶ月に一度は確認したほうがよいですね。
ハンガーの固定形式は、エンドの形状によって表側から止めるタイプと裏側から止めるタイプに分かれますが、メンテナンス性のよい表側の場合も5mmのレンチで止める1本式は緩みやすい傾向にあります。ネジが緩んでぐらつくと変速不良につながるし、場合によってはハンガーが損傷してフレームが使えなくなるから気をつけたいものです。
現在メンテナンスでお預かりしているバイクにも1台だけグラグラ状態のバイクがありました。ネジは締めたけれども、裏側でカニ目レンチで止める受けのネジが通常よりも小さくてレンチが使えません。通常は表側だけ締めていくとしっかり固定されますが、今回は一定以上のトルクを掛けると供回り状態になってしまう。
この状態でも、ホイールのクイックリリースを締めるとハンガーもガッチリ固定されるので通常の使用では問題ないけれども、供回りするということは油分が付着しているのかもしれない。さて、どうしようか?