バイクメンテナンス
バイクメンテナンスに必須のケミカル類4種
サビと腐食はバイクの大敵ですが、サビは外観で判断できるケースが多いためどういうトラブルが起きているかある程度は予想できますが、メンテナンスでお預りする際に困るのが腐食のほうです。外観だけではわかりにくいから。
サビと腐食を防ぐためには日頃のメンテナンスが大事。特に雨天走行が多い場合や、海に近い地方にお住まいの方、スイムのあとにバイクを使うトライアスリートの方は、ロードバイクの点検整備は通常は一年に1回でよいですがもっと早めて半年くらいで行ったほうがよいかもしれません。特にネジのサビ付きは外観ではわからず固着して外せないこともあるため気を付けたほうがよいです。
今回は事前にトラブルを防止するためと、そしてバイクをよりきれいに輝かせるために、適材適所にどのようにケミカルを使えばよいのか、その使い方を含めて書いていこうと思います。
今回の記事で登場するケミカルは、ワコーズのラスペネとシリコーンルブリカント、WHITE LIGHTINGのMATTE FINISHER、そして店長一押しのSOFT99コンパウンドの4点。最近使ったこれらのケミカルが、どのような効果をもたらしたのでしょうか。
強力な浸透力と潤滑、防錆性にも優れるワコーズのラスペネ
まず最初はワコーズのラスペネです。洗車と点検整備、パーツ交換でお預りしたバイクですが、リアブレーキの動きが悪いとお聞きしてブレーキを確認したところ、手前側のアーム(Cアーム)が連結されているピボットボルトのナットがなくなっていました。
シマノのデュアルピボットブレーキの場合、アームのボルトユニットのナットはロックタイトで固定されています。旧式モデルのCアームのボルトユニットはリペアパーツで用意されていますが、ただ、このパーツを再度ロックタイトで固定しても、果たして、ぐらついているアームが正常な動作に戻るのかという不安もあるので、もしここのナットが外れた場合はキャリパー本体を交換したほうが懸命ですね。
で、ブレーキ交換でキャリパーを外す前にはもちろんまずワイヤーを取り外します。今回はワイヤーも交換するのでインナーのキャップをカットして、固定ナットを緩めて引き抜こうとしたところ、ん?あれっ、アウターが抜けない。何度試してもまったく動く気配がない。しょうがないから力ずくで抜きました。抜いたというより、もぎ取りました。
おー、ロックタイトなみのすごい固着力。螺旋状に巻かれた金属が完全に延びきっている。先端だけキャリパーのアウター受けに残っているので見てみると、、
錆びてはいないので腐食が原因ですね。固着していたのはここだけではなく、フレーム側のアウター受けも腐食で取れなかったので、ここでラスペネの登場。しばらく時間を置いて液が浸透してから、マイナスドライバーでコンコン叩きながら外しました。
フレームに溶接しているアウター受けは、一気に強い力を加えるとフレームから分離することがあるので注意しないといけません。キャリパーでやったような力ずくはご法度。
カーボンフレームの場合も、エポキシ樹脂の接着剤でくっ付いているアウター受けが、まれにポロッと取れることがあるようです。何かに当てたり、ぶつけたりしないようご注意ください。廉価版でも内装式が進んでいるのはその対策も含めてなのかもしれませんね。
マイナスドライバーはこういう作業にも便利ですが、もちろん通常の作業用ではなく加工して先端を薄くしたものを2本用意して使っています。特にママチャリのナットに被さっているキャップはこれがないと外せません。毎日重宝しています。
今回ここの作業で使ったラスペネは、水置換性なので水に濡れた状態でも効果を発揮するようです。1本あると便利ですね。
艶出し効果バツグン!ワコーズのシリコーンルブリカント
今年はコロナ禍の影響なのか、店舗で販売されるロードバイクは高いか安いか二極化になってる感じで、これは買取りのバイクも同様です。
買取りで安価なモデルは装着コンポがSORAもしくはClarisで、一段上のTIAGRAあたりもそうですが、旧式モデルはブラケットのプラスチックがどんどん退色してきますね。保管状態によっても違うのでしょうが、色褪せが進んだバイクは白っぽくなって見栄えも悪く、これは仕様がないのだと諦めていました。数年前までは。
でも、フレームの艶出しで使っているシリコーンルブリカントを、パーツに使ったらどうなるだろうと試したところ、施工後の変わりようにビックリ!
なんと、新品のような艶が戻ってきました。感激。クランクとかも、こちらはモデルに関係なく色褪せてきたりしますが、施工すると表面に光沢が出てものすごく見栄えがよくなります。
ご自分でメンテナンスされる方は、シリコーンルブリカントも1本あると便利ですが、フレームに塗布する時は洗車後に汚れを落としてから行なわないと、逆にフレームを傷つけたりするのでご注意ください。もちろんパーツもですね。
施工後は汚れが付きにくく落としやすくなりますから、これからのバイクメンテナンスも作業が楽になると思われます。特に通勤などで毎日のようにバイクに乗る方は、雨の汚れ対策にも定期的な施工をお勧めします。個人的には一車に1本必需品ではないかと。
そして、シリコーンルブリカントはもちろん艶出しだけが目的の潤滑剤ではありません。防錆効果もあるし、使用頻度が高い方は定期的に駆動系の稼動部分にシュシュッと吹き付けておくと、潤滑性能を維持できてトラブル防止にも役立ちます。
シリコーンルブリカントはべたつかないので他の潤滑剤のように汚れもそれほど気にする必要はないかと思いますが、注し過ぎにはご注意ください。稼動部分は潤滑剤を注し終わったら余分な油は拭いておくのがバイクをきれいに使うポイントです。
バイクメンテナンスの際は、チェーンのメンテナンスもそうですが、注油のまま終わらず注油後のクリーニングとセットで作業するのがベスト。
フレームのキズ消しや汚れ落としの究極コンパウンド
アティックは初心者の方向けに現在は中古バイクに力を入れていて、店内の陳列バイクも今年からすべて中古車に置き換わりました。バイクによってはとても中古には見えないとお褒めの言葉を頂戴することもあって、そんな時は、時間を掛けて磨いた作業が報われたようで心の中でちょっと嬉しかったりしますw
走行数十キロ程度ならほとんど問題ないですが、中古なのでフレームの擦れ跡やキズは避けて通れません。そこで登場するのが写真のコンパウンド。他にも軽いキズなら台所用のクレンザーも使います。
これらを目の粗い順から段階的に使用して、最終的にシリコーンルブリカントで仕上げます。もう一つ二つ最終仕上げで用意しているガラスコーティングのコート剤がありますが、こちらは材料費としては価格が高いので、洗車で「フレームコーティング施工」のオプションを希望される方限定です。
で、今回買取りしたバイクで行なった汚れ落としで、また感動することがあったのでちょっとご紹介します。
油焼けで変色したフレームにも効果大!
このバイクはまだ走行1回で、全体的にほぼ新車同然の状態で程度はよかったけれども残念なことに油焼けが目立っていました。ヘッドの他、フレームの前後のエンド周辺、FDの下あたりにも黄色っぽい汚れの跡がありました。ノーメンテナンスで数年間保管していたようですから工場で付着した油が原因で変色したのでしょうか。
しかしこの汚れは手強かった。最初は台所クレンザーで挑むも状態はまったく変わらない。次にフレームにはほとんど使用することのない金属サビ取りの研磨剤を使って2度めの挑戦。クリアーコーティングに染みこんだ黄色い汚れをゴシゴシ擦ったら、かなり落ちました。写真の状態です。
落ちはしたけど、さすがにサビ取りに使う強力研磨剤でもまだ残っているので、これ以上は無理だろうと思いつつ、駄目もとでSOFT99の一押しコンパウンドを使ってみたところ、なんと、懸命に擦ってるとみるみる汚れが落ちてきて、さらに擦り続けると、うっすらと頑固に消えなかった黄色い跡もすっかりなくなった。このコンパウンドは凄い。
アフター↓
SOFT99コンパウンドはキズ消しからつや出しまで使えるという商品で、「細目、中細、極細」の順で仕上げていきます。極細はプラスチックにも使えます。よろしければ格闘の記録をこちらの記事で。
フレームに使う場合は細目→極細か、中細→極細で3種類は使いません。今回は白で目立たないので細目だけで大丈夫でした。黒系のフレームは、クリアーコーティングの微細なキズもわかりやすいので、最後はプラスチック製品と同じように必ず極細で仕上げます。
マット系塗装のフレーム専用クリーナー「WHITE LIGHTING MATTE FINISHER」
価格帯の上位モデルはマット系の塗装が増えてきたように思います。マット系のフレームには専用クリーナーを使わないと、表面に光沢が出来たりしてマットな色調が損なわれたりするので気をつけないといけません。
キズがあってもコンパウンドで磨くこともありません。一度光沢が出来てしまうとたぶんそれをまたマットな状態に戻すことはできないと思うから、マット系塗装のバイクはこれまで洗車もお断りして(部分マットはOK)、中古バイクを洗う時は慎重に作業していました。
洗車だけだとこんな感じです↓
マット系のフレームに使用する専用クリーナーは各社から出ていますが、アティックで現在使っているのはWHITE LIGHTING社の「MATTE FINISHER」。これを全体に万遍なく吹きかけます。
拭きかけ終わったら、速やかに拭き取ります。軽く拭くだけですが、その違いは明らか。洗車だけの写真と、洗車後にさらにMATTE FINISHERで施工した見出しの写真とを見比べると、洗車で残っていた汚れが取れていることがわかると思います。
ただし、汚れは落ちますが一度擦れてしまった跡はそのままですから、マット系塗装のオーナーは普段からバイクの扱い方にはご注意ください。もちろんマット仕上げのパーツにも使えますので、こちらも1本持っておくと重宝するかと思います。