自転車修理
ビックリ仰天!ロードバイクの装着品に起こったトラブル2件
いずれも初めての経験でした。SPD-SLペダルの破損と、もう1件は正確には装着品ではないけど、カセットギアを外そうとロックリングを緩めるためにギアに装着した時に破断したスプロケットリムーバー。どちらもほとんど体験できないような、まさしくビックリ仰天の出来事でした。
ビンディング箇所が破損したSPD-SLペダル
坂道でダンシングの時にこうなったら怖いですね。バランスを崩して落車するかもしれない。でもご安心ください。ビンディング箇所が破損したのは、外す時にすぐに解除できなくて、ガチャガチャ動かしている最中こうなったようです。ビンディングペダルはクランクが上側にある時は外しにくいけど、どういう状態の時に破損したのだろう。もっと詳しく聞けばよかった。
こちらのペダルはPD-R550。本体は樹脂製です。105からはカーボンコンポジットで材質も違うし、ビンディングを本体に止める方法も違います。R550以下のモデルはビンディングを固定するシャフトは圧入式で、105以上はボルト止め。今回は、破損の時に圧入シャフトがどのような状態だったかはわかりませんが、もしもシャフトが緩んでしまったとか万一の時もボルト止めだったら安心ですね。
しかし、どうして破損してしまったのかは謎です。本体が樹脂のため、結局、外そうとした力に耐え切れなくて破損したのでしょうが、一応、シマノにこういう事例が他にもないか聞いてみました。
サポートの方は、そういう事例は聞いたことがないとのことで、店長もビンディングの破損は初めて見たのでそうそう起こるものではないでしょう。ビンディングペダルが初めての方も心配する必要はないですが、本体がより上位グレードのモデルのほうが安心ではあります。
そういえば、サポートの方と話している時にシマノ製品に関する有力情報をもらいました。
シマノでは、2年以内の使用期間内であれば補償の対象になるようです。これは知らなかった。シマノ製品の初期不良というのはあまり聞かないけれども、ペダル以外でも何かシマノパーツでトラブルが発生した場合は問い合わせてみてもよいかもしれません。もちろん個々の製品によって補償内容は違うでしょうし、あくまで通常の使用範囲内で発生したトラブルが対象だとは思います。
スプロケットリムーバーの破断
そのアクシデントは持ち込まれたバイクの修理中に起こった。お客様が持ち込まれたバイクはスポークが1本折れていて、最初はスポーク交換でのご相談。そこで、スポークを交換するための作業内容を説明したわけですが、その説明をしている最中に、そのスポークはお客様ご自身でカセットギアを外そうとした時に折れてしまったことが判明。
で、作業する前から、これはロックリングがだいぶ固いんだろうなとは予想してました。まず、通常はこれで外れる特大のモンキーレンチをロックリングを外す工具にセットして、グイッと力を加えるも、このロックリングはビクともしない。
次に、1mの延長パイプを用意。ロックリングがこの延長パイプを使って外せなかったことはないから、これで大丈夫だろうとレンチをアルミのパイプに入れて再びトライ。「あれっ?」、なんと、まったく緩む気配がなく、こんなの初めて。
ここで、お客様から応援のお声が掛かり、スプロケットリムーバーのほうを持ってくださることになった。一人よりも二人のほうがトルクを掛けられるからね。で、もう一度、グイッ。でも外れない。
今度は足で保持してくださることになって、リムーバー側にはさらに力が掛かるから、こちらも渾身の力を振り絞ってさらにグイーーーッと延長パイプに力を加えた瞬間、「バキッ!」
突然の激しい音に、最初は何が起こったのかわからず、ギアが欠けたのかと思いました。唖然として、一瞬の沈黙のあと、よくみると、リムーバーのチェーンが破断していた。
なんとなんと、こんなこともあるんだね。ほんとにびっくり仰天!
残念無念。結局、このバイクのスポークは交換することができなかった。ギアを外せなければ、フランジにスポークを通せずスポーク交換は不可能。こうなるとホイールを換えるしか手段がありません。
今回はお二人で来られていて、聞けばもう一人の方もFUJIの同じツーリングモデルに乗っていて、その方もギアを交換しようとした時にロックリングが固くて外せなかったとのこと。
完成車販売の時にロックリングを増し締めして固着してしまったのか、生産段階で最初からこうだったのか知る術はありませんが、ともかくロックリングの固着は初めてです。新車でもしも同様の状態だったら補償対象かもしれないので、これを契機に今後の新車販売ではロックリングの固定状況も確認しようと思います。アティックでは今までこんな事例はないんですけどね。
スプロケットリムーバーの対応規格による今昔ものがたり
スプロケットはスピード(段数)によって歯の厚さが違うため、取り外す時のスプロケットリムーバーもそのスピードに対応するリムーバーを選ばなければなりません。リムーバーに圧入されているチェーンが、スプロケットの対応スピードに合うもので作業するわけですね。
今回のギアは8速だったので、9速以下のギアに対応するパークツールのスプロケットリムーバーを使ってました。10速以上はシマノを使っているからよしとして、9速以下は他には持ってないので、さて困った。
まさかリムーバーのチェーンが破断するなんて考えてもいなかったから予備は持っていない。パークツールがもう一本あるにはあるが、開業以来そちらは出番がなかったから、同じパークツールのロックリング外し専用に使うため(持ち手の六角穴のところを使用、シマノとは径が違うのです)、持ちやすいようにチェーンを切っているので使えない。
そういえば、昔ボス式の時に使っていた工具がまだあった。それを引っ張り出してきて使うことにしました。
30年以上前から乗っていて自分でメンテナンスをしている方でないとわからないかもしれません。現在はカセット式で簡単に交換できるスプロケットも、昔は、ボスフリーに1枚1枚ねじ込んで装着していたのです。なので、取り外しは2本のリムーバーを使って行います。
今は上位機種のロー側は3枚とか2枚で連結されていますが、当時はレースのコースに応じて1枚づつ組み替えて使っていたものです。ボス式フリーギアはもちろんコースごとにいくつか用意していて、その装着ギアで対応できないコースの時に1枚1枚組み替えて使っていたわけですね。
店長が登録選手で走っていた全盛期の頃は、7速が最大スピード。13Tトップだとクロスレシオはローギアが19T。修善寺とか下りが大事なコースでは(ここは相性いいコースで4回走って3回入賞、落車1回。ちなみに当時はルール改正前で反時計まわりの下りゴールでした)13Tは回し切っちゃうので12Tに替えてセカンドは1枚飛ばして15T。店長は小柄な体格のため上りはダンシングを多用していたから、よっぽどきついコース以外ローギアは19Tでした。修善寺の「心臓破りの坂」とか呼ばれている12%の坂も距離が短いから問題なし。そのギアを踏めなければ修善寺では勝負に加われなかった。
その後、初めてのツールド北海道でオロフレ峠に試走に行った時から、さすがにあの長い坂ではインナー42は無理なので39Tに替えましたが、それまでフロントは52×42T。インナーローが42×19Tは今では考えられないギア構成です。感慨深い。
このスプロケットリムーバーはサンツアー製。当時はデュラエースとの双璧ともいえるサンツアーのシュパーブを使っていたので、リムーバーもサンツアーです。サンツアーのデザインがとても好きでした。コンポは国内ではシマノが独占状態ですが、古き良き時代を知る者として、サンツアーは相当いい仕事をしていましたね。スギノや吉貝など各メーカーが結集したシュパーブは十分にデュラエースと闘える秀逸コンポ。一応デュラも使いましたがシュパーブのほうに魅力を感じてました。堅牢なシマノに対し、機能美のサンツアーといった感じ。
まさか数十年も前のサンツアーの製品をまた使うことになるとは思ってもいなかったけれども、大事に取っておいてよかった。自転車歴が長いと昔のものが役立つときがちょこちょこあるものです。