パーツ換装
サーヴェロのトラブルパーツ交換物語
仕事が汲汲で久しぶりの更新。今回は、先日ようやく修理を終えてショッピングページに掲載したサーヴェロのS2に起こっていたトラブルについて書いてみたいと思います。同じトラブルに見舞われた時は今回の対応方法が参考になるかもしれません。
チェーン落ちにつながるクランクのガタ付き
買取りから早2ヶ月、このバイクは数年前に新車で販売したバイクですが、今回は別のバイクをご購入頂いた時に下取りした、いわば出戻りのような形で買い取ったバイク。何回かパーツを交換されているので、当時の販売状態よりもさらにグレードアップしています。
トラブルは、再販のために、全体的にネジが緩んでいないか確認していた時に見つかりました。何度か作業を手掛けていたから懐かしさもあって嬉しい気分で整備点検していると、査定でシフト操作していた時にはわからなかったクランクのガタ付きを発見。
クランクアームのフィキシングボルト確認中にわかったこのガタは、片方のクランクを保持して横に力を加えてはじめてわかるガタ付きです。クランクを回しているだけではガタはわからずシフトも正常に動作する。
ボトムブラケット(以下BB)の周辺にはチェーン落ちのキズが目立つので、以前、キズの原因確認のためフロントのシフトチェンジの仕方を聞いていた時に、チェーン落ちが発生しやすい仕方で変速していてそのためだと思っていたら、どうもそれだけではないようす。
クランクのガタ付き具合はバイクを正常に使うには支障がある状態なので、これだけクランクがぐらぐらしているということはおそらくこれもチェーン落ちに関係していたのでしょう。
クランクがガタ付いていた原因
こちらのサーヴェロにはOEMのROTORが装着されていて、ROTORクランクはベアリングのガタ付きを調整できるので一応試してみました。
ROTORクランクのガタ調整範囲は1mm以内。とりあえずガタがなくなるまで調整してみると、ガタ付きは取れたものの、今度はクランクの動きが異常に重くなって、しかもバキバキと音がする。
さすがにこれでは乗れないのでBBを交換することにしました。もちろん調整範囲1mmはとうに超えていて、音がなく仮にスムーズにクランクが回ったとしてもこの状態ではBBにトラブルが発生する確立も高いので、1mm以内に収まらないROTORのガタ調整はBB交換がマストですね。
あとで装着されていたベアリングを確認したところ、このベアリングはシャフト挿入部が指で確認できるほどぐらつくので、クランクのガタ付きはほぼベアリングが原因とみていいでしょう。
サーヴェロのBB規格はもちろんBBrighhtの圧入式BB。BB規格が違っても、φ30mmシャフト対応のベアリングはBB30やPF30に使われているベアリングと共用できます。これは在庫があります。
でも、この在庫品と交換したくても確実に外せる工具がありません。カップからベアリングを取り出す専用工具は、FSAからこういうベアリングプーラーが出ているようですが、代理店では在庫がなく取扱いもしていないようす。以前行ってべリングだけ外れたこちらの方法をやってみようか検討するも、カーボンシェルにキズが入ったら困るので今回はやめました。
そこで、BB30のフレームで使うパークツールの工具でべリングだけ外せるか試してみました。結果は、篏合がきつくてカップも一緒に外れてしまい、やっぱりこの方法は駄目だった。一応φ30mmシャフトのベアリング着脱工具ですが、ベアリングがフレームに直接圧入されている方式ではよいけど、カップ圧入式の場合はベアリングだけを完全に取り外せるかはその時の運次第。
結局、BBを丸ごと交換することにして、叩き出す工具はあまり使いたくないので、反対側は今回も「ACRZ プレスフィットBBボトムブラケット リムーバー&インストレーション」で外すことにする。以前はそのまま使っていたけれども、今はフレームに傷が付かないようカップにゴムの保護材を当てています。この工具の使い方はこちらのページで。
今回もスレッドフィット式のTOKEN製をピックアップ
交換したBBは、圧入式の時にいつも使っているスレッドフィットBB。BBrighht規格のTOKENコンバーターを用意しました。
この製品はドライブ側と反ドライブ側のスリーブにネジが切ってあって締め込むことで完全に固定され、ただ圧入するだけの製品に比べて異音のトラブルには効果絶大です。(音鳴りの原因が圧入カップの場合)
着脱も簡単です。「ACRZ プレスフィットBBボトムブラケット リムーバー&インストレーション」のようなツールを用意しなくても、BB386規格など、FSA・MegaExo外径48.5mmの対応工具で脱着できます。
工具は1本だけで大丈夫な時もありますが、共回りする場合はドライブ側と反ドライブ側の左右で2本使います。今回初めて共回りしたのでシマノ工具が使えるTOKENのBB工具から片方だけを使い反対側にセットして作業しました。
ちなみにこの工具はBB工具のコンバーターのようなもの。左右で1組になっています。この工具だけで作業する場合は、BBカップからボロッと外れやすいので、しっかり取り付けておくためにはハンガーの中に輪ゴムを通しておくと便利です。
輪ゴムのわっかに木片とかキズつく心配のないものを付けておくとよいですね(店長が使っているのは爪楊枝のきれっぱしw)。これでしっかり左右のカップに固定されるからずれることなく作業に集中できます。
圧入式BBにはグリスが必要か?
このバイクに装着されているBBはROTORのOEM品。外側に分厚いカバーが取り付けてありますからこれは外しておきます。コンバーター装着後に元のカバーを付けるとクランク取り付けに不具合が出てしまいます。
ROTORの圧入BBをハンガーから外すことができたら、コンバーターの取り付け自体はいたって簡単。説明書のイラストで対応パーツを確認すれば間違うこともありません。説明書にはいくつかの規格ごとに必要なパーツが記載されているからイラストの順番どおりスリーブにセットしていきます。
ここで悩むのがBBシェルに圧入されるカップ部分にグリスを付けるかどうか。材質がプラスチックなので、シマノではグリスは付けないでくださいとアナウンスしています。しかし、TOKENはイラストのとおりグリスを塗布することを前提に装着の説明がなされています。
店長は異音防止のためにシマノ製でもグリスを付けます。シマノは圧入BBの中では音鳴りが少ないほうだと思われますが、それでも時折異音が発生したと聞くこともあるから、音鳴りが心配な方はグリスを塗布しておくことが異音対策の一つではあります。
ただし、シマノがグリスを使うことを推奨しないのは、カップの材質がプラスチックのため固定に問題が生じる可能性もないとは言えないことを危惧しているのかもしれません。ここは自己責任での判断となります。
店長はこれまで数回シマノで固着の経験があって、外すのに相当苦労したことがあるので、そのこともあって圧入BBにはグリスを使っています。ただ、メーカーが推奨しない作業はあくまで自己責任での作業になりますね。
定期的な点検整備の重要性
今回は、サーヴェロのROTORクランクに生じていたトラブルについてご紹介しました。ガタ付きがなぜ発生したのか、その要因は特定できませんが、定期的な点検を受けておけば避けられたトラブルだったのかもしれません。
ロードバイクは軽量で機敏性が高く高速で走れる分だけ保守メンテナンスが重要です。パーツは大きなものから小さなものに至るまで、そのほとんどがネジで装着されています。走行中の振動で緩むことは大いに考えられることです。
ネジの緩みは大きなトラブルに発展する可能性もありますから、少なくとも1年に一回は定期的に点検整備されることを強くお薦めします。普段はセルフメンテナンスで済ませている方も、ショップの点検整備を受けておけば安心して思う存分ライディングが楽しめますね。
時折、バイクに生じている現象が今後重大なトラブルに発展する可能性があるということを知らずに乗っているケースをお見受けします。そういうバイクで想定されるトラブルは、ヘッドがガックンガックンするほどガタついているベアリングのぐらつきによるヘッドパイプの亀裂とか、ディレイラーハンガーのネジが緩んで脱落する現象など。どちらも修理のご相談で数件経験ありますが、事前にアクシデントを回避するためにも定期的な点検整備は絶対に必要ですね!