自転車修理
Campagnoloギアに起こっていた初めて経験するBBトラブル
カンパのカーボンクランク、一度は使ってみたいと思われている方もいらっしゃるでしょう。1月に買取りしたロードバイクにもケンタウルのカーボンクランクが装着されていました。
しかしこのバイク、かなりイレギュラーな組み合わせ。コンポーネントがケンタウルなら問題ありません。でも、こちらのバイクはギアクランクだけがケンタウル。ティアグラの9速コンポをクランク周りだけ換えて使っていたようです。
対応スピードも違うこの組み合わせでどのくらいの間使っていたのだろう。クランクがぐらぐら状態で、最初からこのままでは正常に使えないとわかるほど変速に支障が出ている。この状態では使用できないのでコンポを丸ごとシマノに交換します。丸ごとと言っても9スピードのスプロケットとチェーンはそのまま使ってSORAの9sに換装しました。9sに換える場合、現行の9sコンポはR3000系のSORAだけとなります。
ガタガタの原因はベアリング
ギアクランクを外して確認してみたところ、ぐらつきの原因はベアリングでした。カンパのウルトラトルクは、通常はBB側にあるベアリングが両側ともクランク側に圧入されています。
最初はベアリングだけ外して、ギアもメッキが剥がれているけどクランクはまだ使えるだろうと再利用も考えてましたが結局やめました。ウルトラトルクの固定ボルトを外しても、なぜか両側ともクランクが抜けなかったから。
普段ならボルトを外せば手ですんなり抜けるクランクが、手ではどうやっても抜けなかったのはカップの中に挿入されるベアリングが固着して、どこかがどこかにくっ付いていたもよう。どこでくっ付いていたのか、この時はまだわからなかった。
仕方がないから、まずドライブ側のクランクをプラハンマーで叩き出して取り出したところ、BBカップの中はサビサビ状態。
ん~、これはこれは。こうなってたか。
カンパBBの反ドライブ側はどうなっているか?
次はドライブの反対側。こちらは相当手強かったので、プラハンマー叩きはやめて、ママチャリで使う巨大ポンチを使ってシャフトを直接叩き出す。
ドライブ側はクランクしか叩けないから外しにくかったけど、真ん中のシャフト叩きは一発で外れた。もちろん叩いた瞬間クランクがどっかに吹っ飛んでいかないように、圧入BBを外す時と同じくビニール袋で受けてます。
左クランクも、ウルトラトルクの噛み合わせが外れて自由に動いているのに抜けなかったのは、右クランクと同じくベアリングの先っちょが部分的に固着していたのが原因と思われます。
そして、左のカップは右側よりも汚れがひどかった。固着の喰い付きが大きかったのもこの状態を見るとよくわかります。
通常はクランクの汚れはギアが付いている右側のほうが激しく汚れるものですが、BBカップの中は違うんですね。こちらのバイクはフレームを掃除する前の汚れ具合からその使用状況を推察すると、おそらく日常的に雨の日も使っていたと思われます。ということは、防水性という観点からはドライブ側のほうが反対側よりもちょっとはましだったということでしょうか。
いずれにしても、チェーンリングのメッキ剥がれも激しいし、この状況はノーメンテナンスで乗っていたのかもしれないな。シマノのBBは防水性が高いので(2ピース型クランクの場合)メンテナンスフリーといってもよいかもしれないけれども、カンパは違う。構造的に、メーカーからも定期的なベアリング交換が求められています。
シマノにはないカンパのカーボンクランクを使ってみたいという場合は、面倒かもしれないですが、カンパクランクはBBの状態確認など定期的なメンテナンスが必須です。
メンテナンスの重要性を再確認
中古バイクを扱い始めてから、新車だけ販売していた当時に比べてあきらかにトラブルに接する範囲が広がっています。特にBBまわりはこのブログでもこれまで多種多様な記事を上げてきました。
トラブルに接する経験だけではなく、仕様や規格についても、まだ中古車を扱っていなかった当時からみると今はずいぶん知識も深まっているように思います。ディーラー制で取り扱う新車だけでは扱い車種が限定されるので、中古で様々なメーカーに接することができるのはある意味感謝です。スポーツバイクを扱うショップとしては、トラブルを発端として知識が明るくなるということは、そのトラブルは学びを得る機会につながるから反面よい経験としても日々の業務に活かされていると思います。
でも、これはもちろんバイクを買取りした買い手としての主観。オーナーがもう手放したバイクだから言えるのであって、まだバリバリ乗っている現役バイクだったらトラブルは大変困りますね。いきなり発生する場合もあるでしょうけど、多くは事前の点検整備でその兆候を知る可能性は高いと思われます。
アクシデントにつながるかもしれない兆候を捉えられるかどうかは、経験と腕次第。腕とは技能でもありますが、ぜひ感性の研ぎ澄まされているプロショップで定期的な整備点検を受けて、大事な愛車を大切にしてあげてください。