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シフトのインナーケーブルにまつわる変速トラブル

2024年03月15日

自転車修理

シフトのインナーケーブルにまつわる変速トラブル

ある日のこと、納車の際にシフト操作の説明をしていた時に、突然、とあるアクシデントが発生。変速レバーが一切機能しない。おかしい、販売前の点検では正常に動作していたのに、どうして変速しないのだろう?

コーティングワイヤーの被膜が原因していると勘違いしていた変速不良

初期動作はトップギアからだったので、巻取りレバーでシフトダウンをしたところ、3枚ほど変速したところでピタッと止まってしまった。それ以上は作動せず、解除レバーで戻してみてもシフトアップも機能しない。

こちらのバイクに使われているインナーケーブルは、あまり見掛けない黄色っぽいコーティングワイヤー。どこのメーカーのものかはわからないけれども、先端の毛羽だっている状態から、ポリマーコーティングのようにコーティングされた被膜が剥がれている状態だと思ってました。これまでも何度か同じような現象が発生していたケースがあったので。

ポリマーがコーティングされていると、劣化したポリマーが剥がれてライナーチューブに詰まって抵抗になり変速不良を起こします。以前もグニョグニョしたポリマーをライナーから取り出し解消したケースがありましたが、今回もきっとそうだろうと判断し、お客様にそう説明して納車は結局延期することに。

でも、原因は違った。もっと単純なことでした。大体こんな短期間にシフトの状態が悪くなるのもおかしいといえばおかしいです。

こんなこともあるんだと、原因がわかった時点で先入観で判断していたことを猛省した店長です。掛けなくともよいご迷惑をお掛けしてしまった。すみません。

シフト不良はケーブルガイドに通すライナーチューブに起因していた

シフトのインナーケーブルにまつわる変速トラブル

その後、時間が空いた時に、リアディレイラーの固定ボルトを緩めてインナーの動きを試してみると、インナーを引っ張りながら動かすレバーの動作は比較的スムーズ。ライナーの中で詰まっていると、こんなには抵抗なく動かないので、これはどういうことだろう?

で、インナーケーブルを全部抜いてみると、これはポリマーコーティングのようなワイヤーではなかった。シマノでいうとオプティスリックのような感じ。劣化で被膜が剥がれるコーティングではない。

調べたら色合いから某卸問屋が自社ブランドで展開しているPTFEのカラーワイヤーか。ではどうしてインナーを固定している時に、シフトのレバーが機能しなかったのか。点検の時は問題なかったのに。

今度はバイクを引っ繰り返してBB裏を確認したところ、ここでようやく原因判明。

今回のバイクは、カーボンフレームでもBB裏のルーティングはボルト止めのケーブルガイド。そのケーブルガイドにライナーチューブが嵌っておらず、ワイヤーに遊びが出来ていることが原因だった。

ケーブルガイドから抜けてしまったライナーチューブ

シフトのインナーケーブルにまつわる変速トラブル

実はインナーケーブルを抜いて新しいケーブルに交換したあとも、レバー操作でシフトチェンジは出来るようにはなったけど、インデックスの調整が機能しないのでおかしいと思ってBB裏を確認したのでした。

そこでようやく変速不良の真相が判明したわけですが、ガイドの穴(ブリッジになってるところ)からライナーチューブが抜けていると、ライナーの先端がガイドの端に当たります。ライナーは材質がビニールで柔らかいためこの状態ではガイドの手前で弛みが出来てしまいます。

そうするとワイヤーがピンと張られていないため、その状況でいくらアジャスターで調整しても当然のことながら変速不良は解消しません。

納車の時によく見てたら気付くことだけど、ワイヤーのコーティングに気を取られて先入観で判断してしまった。でも、点検ではシフトに問題はなかったし、点検後、BB裏に表記されている車体番号を確認した時もライナーはケーブルガイドに嵌っていたので、どのタイミングで抜けてしまったのだろう。

ライナーチューブがなぜガイドから抜けてしまったのか

シフトのインナーケーブルにまつわる変速トラブル

そういえば、思い当たることが一つ。こちらのバイクはケーブルが内装式のため、アウターキャップがフレームにしっかり嵌っているかが気になり、一度引っ張ってケーブル挿入口から抜いたことがありました。

ダウンチューブにライナーチューブを装着している場合は、一般的にはライナーはアウターキャップと分離して、ケーブル挿入口の中でライナー自体のつばで止まっているため、そう思って抜いたわけですが、このバイクの装着ライナーはキャップと一体式となっていました。

この時にケーブルガイドから抜けてしまったんですね。ライナーの長さが短かったようです。フレームからアウターキャップを抜いたのは数センチだったから、通常はその長さ分くらいはガイドの後ろ側に余裕があるものなので気にも留めなかったです。

納車の時にレバー動作がスカスカだったのは、ライナーの中に詰まったものが抵抗になってインナーが動かなかったのが原因ではなく、レバーからアウターを通ってフレームにピタッと密着するべきインナーが緩んだ状況になってスカスカしていたのでした。

これは、シフトワイヤーを替えずに使っていると、アウターが劣化してビニール被覆がボロボロになってしまう状況と同じ理屈です。こんな感じ↓

アウターが裂けてインナーを張るための抑えが無くなると正常な変速が出来なくなるんですね。スポーツ的に乗っているロードバイクではほとんど見ないですが、こういう鋼線バラバラ状態は街乗り自転車でよく見掛けます。これは紫外線が原因。屋外駐車の自転車はご注意ください。

ともあれ、今回は同じ過ちをご経験なさらないように、店長の失敗談を敢えて公開させてもらいました。少しでも参考にしてもらえれば幸いです。

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