バイクメンテナンス
雨天走行が多い時にも気を付けたい変速不良につながる2つの注意点
通勤などで雨天も走られるバイクは普段からのメンテナンスが欠かせません。これまでも雨天走行で生じたトラブルを解決した記事をいくつか書いてきましたが、今回はあまりお目に掛からない珍しいケースのご紹介。
フロントディレイラーに起こっていた変速の不具合
新型Rシリーズのフロントディレイラー(以下FD)を調整する時に、以前のモデルと調整方法が異なり戸惑っている方もいるかもしれません。
お客様からお預かりしたバイクでも、何度か調整を間違えているケースがありましたが、今回の事例も、調整ミスも重なりシフト不良が発生していました。
まずはバイクを拝見し、指摘されていたFDが使えないという現象を確認したところ、確かにインナーからアウターにまったく変速できない。
レバーの動作が何かにぶつかって機能していないようです。途中までは動くのでケーブル内のトラブルではないようす。そこで、まずはFDの調整がどうなっているのか確認しながら、一度ワイヤーを外して動作を確認したところ、原因が見えてきました。
新型RシリーズのFDはそれまでの11速と初期調整がまったく違います。こちらのバイクは最初から調整が間違っていました。お客様は購入してからパーツは自分では弄っていないということで、使用している途中で変速不良になったわけですが、その原因と、変速不良を解消した作業方法について詳しくご紹介していこうと思います。
新型フロントディレイラーの構造から生じた変速不良とその解決方法
写真で説明していきます。作業途中でブログに書いておこうと思い立ったので、店長が作業し始めた中途からの説明となります。用語はご自身で整備されない方には難しいと思われますが、シマノのサイトに載っているマニュアルに記載の用語をそのまま使用します。
用語が記載されているページはPDFで公開されているので誰でも見れます。写真で店長が説明していく内容は、目次の「調整」項目(16ページ)で確認できますから関心ある方はご覧になってみてください。
まず、このバイクはケーブル調整ボルトがいっぱいまで締め込まれていて、最初からケーブルの張り調整がなされていない状態だったと思われる。
別のFDで再現した写真を見出しに載せていますがこのような状態です。このボルトを締め込むことで横に見える白い線の位置を確認しながらケーブルの張り調整をするわけですが、ここでしっかり調整されていないと最初から変速に不具合が起こる可能性が高くなってしまうのですね。
そこで、ケーブル調整ボルトをいっぱいに緩めて、初期状態から調整しようとしたところ、アジャストバレル突起部がインプットリンクに当たらない。なぜ?
アジャストバレル突起部を一旦戻してもう一回試したところ、さっきよりも手前で止まるので、ここでケーブル固定ボルトを外してから、受け側(正式名称はマニュアルには記載がないが「ケーブルフィキシングスクリューユニット」、長いので以下「固定ボルト受け側」)の状態を確認してみると、インプットリンクの端に引っ掛かっている。
調整の時に固定ボルト受け側を動かすとジャリジャリしていたのが気にはなっていたが、これは砂が原因で固定ボルト受け側が浮いてしまい、インプットリンクの端に引っ掛かりインプットリンクの中まで入っていかなかったようだ。こうなると調整は一切できないので固定ボルトの受け側を外してクリーニングする。
パーツクリーナーで拭いてから、ウエスで取り切れない細かい箇所の汚れは綿棒で取り除く。
そして、油汚れが落ちたことを確認したあとに、エアーガンでエアーを吹き掛けておけば完璧。もし細かい砂粒が残っていてもエアーで全部吹き飛ばせるから。
クリーニング後は動きもスムーズ。FDを初期状態から再調整する際に、今回のような状態になると潤滑剤を注しても解決しません。(一応、分解前に確認済み)
固定ボルト受け側の下に砂が入ると動きが悪く調整もしづらいので、こういう場合は面倒でも外してクリーニングがベストです。
以上、今回の変速不良の原因は、初期状態での調整がしっかりなされていないことが一つと、調整不足でも最初は変速していたのが途中からまったく機能しなくなったのは、FD内に入り込んだ砂が原因していた二つの要素が重なっていました。
調整不足のほうは、最初はプレートを可動させてチェーンがギアに引っ掛かる動作の最中ぎりぎりのタイミングで変速できていたのが、途中からワイヤーの張りが緩んでそのぎりぎりのタイミングから外れてしまい、FDの可動位置が変わったため生じてしまった現象だと思われます。
砂が原因で変速不良が起こってしまうケースでは、通勤などで雨天走行の多い方は注意しておいたほうがよいかと思います。定期的な洗車がベストな予防策です。