バイクメンテナンス
デュアルコントロールレバーのブラケットカバーが痛んでいる時に注意しておきたいこと
ロードバイクで時折目にするブレーキレバーのベタ付き、ブラケットを握った瞬間に感じるあのベタベタする感触はほんとに嫌なものですね。原因はゴムの加水分解。使用に伴うゴムの経年劣化といってもよいでしょう。
このベタ付き感は、使用年数や保管状況によって程度の差こそあれ、完成車の装着レバーであれば、これは避けられない現象です。時にはいろんな問題を引き起こすことも。
ブラケットカバーが破れていた買取りのバイク
今回買取りさせてもらったバイクは、単なるベタ付きを通り越して左のカバーが途中から破れてなくなっていました。ブラケットの固定ボルトがむき出しで、ゴムは手で千切れるほど劣化が進んでいる状態。
それほど古いモデルではないので、部品が錆びついている状況をみると外に出しっぱなしだったのでしょうか。ゴムの大敵、紫外線で相当なダメージを受けたようす。
このような、ブレーキブラケットに正常なカバーが装着されていない状態は、大変に危険です。手が痛くなるだけでなく、乗車中の状況によって咄嗟にブレーキを掛けようと思った時に、手で千切れるほど痛んでるカバーがさらに破れて、ブレーキ操作に支障が出てしまったらとても危ない。
今回は他にも気になることがあったので、それも併せてご紹介します。
アルテグラのブラケットカバーを105に使用する
このバイクのコンポーネントは、5800系の105コンポ。新品のカバーは取り寄せとなるため、作業は出来るだけ早く終わらせたいので在庫の6800アルテグラから外して使うことにしました。
デュアルコントロールレバーのST-5800とST-6800、それとティアグラのST-4700はブラケットカバーが共通です。バイクに装着状態のカバーを交換するためには、インナーケーブルをアウターワイヤーからすべて抜き取ったあとに、固定バンドからブラケットを取り外して行うことになります。
今回はシフトもブレーキもワイヤー類を全取っ換えするのでちょうどよかったですが、もしもメンテナンスでカバーだけ換えたいという場合、ワイヤーの交換料金は想定していなかったという方もいるかもしれませんね。定期的にワイヤー交換する時に一緒に換えるとよいかもしれません。
カバーのメタ付きがどうしても気になり、それまで待つのは難しいという方は、これを解消できる店長の秘策をこちらの記事で紹介していますから、そちらをご覧になられて対応してみてください。
やってはいけないブラケットカバーの交換方法
ブラケットカバーを交換する時に、一つ注意しておきたいことがあって、それはカバー交換の仕方ですが、中には、ワイヤーまで交換するのは嫌だから、レバー側から通してしまおうと、このように考える方もいるかもしれません。
実は店長もそう思って、べた付きの激しかった中古の販売バイクで試したことがあります。内装フレームだったから、シフトワイヤーは交換になるのでその作業時間を考えレバー側からトライしたわけですが、これはやめたほうがよい。デュラのカバーはあっけなく裂けてしまった。(新品なのに・・・)
バンドで固定する側からだと簡単に着脱できるカバーも、レバー側からだとユニットの出っ張り部分を通す時に相当伸ばさなければならず、無理やり伸びている箇所に亀裂が入る可能性が高くなります。下位グレードのゴム感が強い製品だと大丈夫かもしれないけど、万一のことを考え、この方法はやめておいたほうが賢明です。
ブラケットカバーを交換している時に気になったこと
いよいよ、6800から外したカバーに交換するわけですが、破れているカバーを剥がしている時のことです。使わないからハサミで切ってカバーだけを外した時はまだ気が付かず、固定バンドのネジを緩めるためにブラケット本体を持ったとき、下側に違和感を感じました。
何かがぐらついている。下を覗いてみたら、普段のメンテナンスではまったく触ることのない箇所ですが、樹脂製のカバーが外れ掛かっていた。(紛らわしいからこれは蓋と言おう)
見出しの写真は、ブラケットカバーの交換を終えてから、1本記事を書いておこうと思い立って再現した写真です。5800の105ブラケットには下側にこういう樹脂の蓋が装着されています。
この蓋を固定しているネジは小さくて、しかも受ける側のブラケット本体も樹脂なので金属を締めるほど固定力は強くないため振動で緩んでくるのでしょう。カバーがしっかり密着されていれば、緩んでもカバー内から脱落することはないでしょうが、今回は危なかった。
以前、破れているブラケットカバーをビニールテープで留めているケースを見たことがあります。このネジの脱落防止の為にもしっかり装着できるカバーのほうが安心ですね。
ブラケット下側の蓋が外れていてネジを再装着する時に気を付けたいこと
念のため、右レバーの下側も、この蓋がどうなっているか確認しました。左のようにぐらついてはいなかったけれども、ネジが多少緩んでいたので増し締めしました。
今回のようにカバーの破れでもない限りは、そうそう心配することでもないですが、万一、ネジが完全に外れて再装着しなければならない時のために、その取付方法を再現してみました。以下、よろしければ、今後のご参考に。
ネジがかなりグラグラしていたり、もしもこの蓋が外れていたら、バイクをひっくり返して行ったほうが作業しやすいです。正立状態で下側から覗き込みながら作業するのはチト大変。
小さいネジはネジ山のピッチが小さいのでネジの掛かりがわかりにくく、下からだと暗くてネジの状態も確認しづらい。取り付ける側のブラケットは樹脂だから掛かりがさらにわかりにくいですね。
もしちょっとでもネジの締まりが固かったら、一旦戻してからネジの掛かりを探りながら、スムーズにネジが入っていくまで何度でも繰り返し行ってください。固い状態のまま強行するとほぼ確実にネジを舐めてしまいます。舐めたらこの蓋はもう装着できません。
ここのネジはすごく小さいので、もし精密ドライバーで作業する場合は、柄が短いため角度的にレバーと微妙に干渉すると思うからレバーを横にずらして作業するほうが安心です。
小さいネジはネジの頭からドライバーが外れやすいですね。先端が磁気を帯びているドライバーを利用すると作業がしやすいかと思います。ネジはほとんどが鉄製でしょうし、落下防止のためにも磁化させての使用をお勧めします。
精密ドライバーよりはこちらのほうがネジの頭が合いそうだと思って、普段使う機会の少ないドライバーを引っ張り出してきたところ、先端が減磁していてこのドライバーは磁力がイマイチ。
そこで、マグネタイザーで磁化させて磁力を強くします。自転車修理では、逆に磁力が強いと作業しにくいこともあるので、減磁させる時にもマグネタイザーが1個あると便利ですね。
もし、磁化していないドライバーを使う時は、ネジが小さいから、ドライバーから離れて下に落ちた時にブラケットの隙間に入るのを防ぐためテープを貼っておくとよいです。
店長も最初は減磁していたドライバーだったので、ネジをしっかり押さえているつもりでも指先から滑ってしまい2回ほどこの中に落としました。その都度バイクを正立させて取り出しましたが、一回一回面倒くさいし、中に引っ掛かって出てこなくなったら大変。十分お気をつけください。
ネジが小さいと掴みづらく指先からも外れやすいので、やっぱり磁化させたドライバーにくっ付けてから作業したほうが安心です。
あとがき
今回のバイクはけっこう汚れていたので、ブラケットカバーを交換したあとに、ワイヤーを交換するついでにチェーンも外して掃除しました。チェーンが付いていると掃除しにくく見えづらいチェーンスティの内側もピカピカに磨き、見違えるほどきれいになった。
買取りしたバイクは、販売する時に喜んでもらいたいと店長かなり気合い入れてクリーニングしますが、自分でもビックリするほどきれいになったバイクを見て感慨も一入です。
最近、同じようなバイクが2台続いていて、もう一台はコンポの総取っ替えだったのでなかなか作業ができず、春からずっと持ち越し状態でした。そちらもようやく先日販売する用意が出来て、懸案の2台が完了しこれでとりあえずは肩の荷が下りた気分。
今回の作業は累積すると1台あたり丸一日以上費やしてますが、今シーズンはもう満腹状態。あまり作業が長すぎると他のバイクに影響が出てしまうので、当面は汚れの激しいバイクとか、相当手を加えないと販売できない場合は買取りを控えさせてもらおうかと思います。ご容赦ください。