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続・変速トラブルを抱えていたロードバイクのもう一つの駆動系トラブル

2024年09月16日

バイクメンテナンス

続・変速トラブルを抱えていたロードバイクのもう一つの駆動系トラブル

前回の続き。2つ目のバイクトラブルについてです。こちらはフロントギアからチェーンが外れるという現象で、最初はどういうことだろうとちょっと構えて様子を見てみることに。

走行にも支障を来していた駆動系のトラブル

続・変速トラブルを抱えていたロードバイクのもう一つの駆動系トラブル

こういうチェーンが外れるトラブルの場合、通常はフロントディレイラー(以下、FD)の調整不良を疑います。調整ネジが振動で緩んできたりすると、FDの可動域が変わり、プレートを作動させる時に当初の位置からずれることでチェーンが落ちやすくなります。

もしくは、フロントギアとスプロケットの組み合わせによって、使わないほうがよい、または使ってはいけないギアの組み合わせでフロントを変速した時に簡単にチェーンが外れたりもしますが、話を聞くと、どうやらこれらには該当しないようす。

この困った現象は、走行中に突然発生するということで、チェーン落ちはチェーン落ちでも完全に脱落するのではなく、ギアからチェーンが外れてアウターとインナーの間に嵌ってしまうとのこと。これはシフトに関係なく、普通に走っている時に起こるという。

通販のルック車では品質的にギア版の精度からそういうこともあるかもしれないけれども、ロードバイクでは初めて聞く現象です。

フロントギアからチェーンが外れるようになった原因とは

なぜ、ギアからチェーンが外れてしまうのか、とりあえずギアクランクを一周させて観察してみると、確かに場所によってアウターとインナーのチェーンリングの間隔が違う。写真ではわかりにくいけど、上が広いところで下が狭いところ。最初はインナーが歪んでしまったのかと思った。

でも、インナーが歪むのは、バイクに損傷が出るほどの衝撃でも加わらない限りあり得ないと思うし、このクラスのバイクで通常の使用でギアが歪んでしまうというのも考えづらく、さらに観察を続ける。

今度は、ギアの裏側を見てみる。と、ここではじめて歪みのように見えていた原因がわかった。チェーンリングの固定ボルトが2個も脱落して無くなっている。1個だけ外れていたケースは何回かあったが、2個も外れて無くなってるのは初めてのこと。

1個脱落しただけでは、他のボルトがしっかり締まっていればチェーンリングの間隔にはほとんど影響は出ないと思うけど、2個も無くなるとこんな状態になってしまうんですね。ギアに力を加えると多少ぐら付きます。

チェーンリングがぐら付く状況で走り続けるとどういうことが起きるか

チェーンリングを固定するボルト4個のうち2個も脱落すると、さすがに全体の固定力に影響が出てしまいます。さっそく脱落した箇所に新しい固定ボルトを装着するため、手持ちのボルトを用意しました。

装着コンポは旧式の5800系ですが、ギアの固定ボルトは次代のR7000系と共用なので、まだ数個在庫があったなと小物の収納箱から引っ張り出して装着しようとしたところ、ここで予期せぬトラブルが発生。

雌ネジ側にボルトが入っていかない。何度試しても駄目だった。ネジの規格はもちろん同じM8×8.5。他の固定ボルトを緩めインナーギアの嵌め合いをさらに甘くして再トライしてみるも、しかし、ギア版がグラグラ状態になってもボルトは一向に入っていく気配がない。

どうして固定ボルトが入らないのか。何だかおかしい。普通は雄ネジ側を回すと雌ネジにすんなり入っていくのに入らない。ボルトのほうは新品だから問題なし。問題は雌ネジ側にあった。

アウターギアにインナーギアを装着する雌ネジの出っ張りが、ギアが固定されていないことで、ペダルを踏みこむたびにインナーの装着穴にぶつかり変形してしまったようだ。4箇所とも変形している。初めてみる現象。ボルトが残っていた2箇所も影響を受けていて外す時にだいぶ固かった。

チェーンリング交換となる場合に想定される状況を考えてみる

続・変速トラブルを抱えていたロードバイクのもう一つの駆動系トラブル

受け側の雌ネジ穴をよく見るとつぶれて変形しているのがよくわかります。4箇所でしっかり固定できていなかったせいでこうなってしまったようす。ネジ山が真円でなければ当然ボルトは装着できず、このアウターギアは使えないから交換となります。

ただ、FC-5800のアウターギアは、シマノではすでに完売して現在は販売終了となっている。なので、今回は互換性のあるアルテグラのFC-6800ギアで対応することにしました。

ここで気を付けておきたいのは、今回のトラブル2件のうち、ケーブル交換はケーブルがなくなることはないけど、チェーンリングは新しいモデルが出るごとにメーカーでは在庫がなくなった時点で販売を終了することもあるということ。今回のように、幸いにも代替品が用意できればよいけど、それもなくなればギアクランクを丸ごと交換となります。

もしも、ギアクランク丸ごと交換の場合に、5800系105や6800系アルテグラを使っている時に、そのモデルが販売終了となれば、次代のR7000とかR8000のフロントギアは、同じ11スピードでもFDは旧式と互換性がないため、まずFDは換えなければならず、他の部品の装着状況によってはコンポーネント全体を見直す必要が生じる場合もあり得ます。

そういう大ごとにならないよう、普段の点検整備でネジの緩みが発生しないようしっかり対応しておきたいですね。

モデルによって仕様が違う2ピースクランクのアウターギア

続・変速トラブルを抱えていたロードバイクのもう一つの駆動系トラブル

メーカーから入荷したアウターギアを見て思い出したこと。上の写真はFC-6800用アウターギアの雌ネジ拡大写真です。昔、買取りで持ち込まれたギアクランクで、ティアグラのFC-4700がありました。今回のバイクと同じように固定ボルトが2個しか付いていなかったのでよく覚えています。

そのチェーンリングは2個とも雌ネジが馬鹿になっていて、それで外せなくなった雄ネジ側の固定ボルトが2個だけ装着されたままになっていたんですが、その時は、チェーンリングに埋め込まれた雌ネジの固定はたぶんロックタイトが使われていて、それが動いてしまったのだろうと判断してました。以前シマノからそういうふうに聞いていた記憶があったので。FC-4700ギアの写真をみるとその仕様がよくわかります。

これまで各モデルの雌ネジ装着箇所がどうなっているかなんて、ギアの裏側をまじまじと見たことはなかったため、今回のことで5800や6800のアウターギアに埋め込まれている雌ネジの固定方法を初めて知ったわけですが、4700もこういう仕様なら起きなかったトラブルだったろうなとあらためて思ったわけです。製造コストが関係しているのかな。

2ピース構造のクランクは105以上が中空のホローテック2、4700のクランクは空洞ではなく裏側を肉抜きして重量対策しているただの2ピースクランク。価格差は重量だけでなく固定方法での優劣にも関係してきますね。トラブルのありなしに。

ただ、前に一度この仕様の105でも固定ボルトが空転していたケースがあって、その時はネジを舐めてしまったんでしょうが、4700ギアの時もロックタイトが剥がれたのは過大なトルクが原因だったのではないかと思います。どのパーツも装着する時は適正なトルクで作業したいものです。

さて、シマノから届いた6800ギアにさっそく交換し、今回のチェーン外れ現象も無事解決しました。お客様もこれでまた片道数十キロの通勤を再開することができるようになり、2つのトラブルを解決してホッとひと安心の店長でした。

シマノクランクの仕様「ホローテック2」について

続・変速トラブルを抱えていたロードバイクのもう一つの駆動系トラブル

最後に、普段から気になっていることがあるのでそれについて。クランクの仕様「ホローテック2」についてです。

さっき出てきたホローテック2という名称ですが、ボトムブラケット(以下、BB)もこう呼んでいるサイトを見掛けます。ホローテック2は中空クランクの仕様。シマノでもBBにホローテック2と掲載している場合がありますが、これはBBのパッケージのアイコンと同じく、ホローテック2に対応しているBBだという案内表示に捉えられます。仕様をホローテック2と明記している意図はないかと思います。

製品のパッケージに表記されている「HOLLOWTECH Ⅱ」のアイコンは、ホローテック2専用BBというわけではなく、この仕様のクランクに対応しているということですね。

2ピースクランク対応BBは、ホローテック2かそうでないかに関わらず、24mmシャフトのシマノクランクだったらすべてに使えるので、このアイコンを表記することにはあまり意味がないと思う。

ただ、パッケージの表記自体は、ホローテック2クランクが出た時に、同時に出たこの仕様のクランクに使うBBのために表記されたと思うので、その名残りなのかもしれません。2ピースクランク対応BBのパッケージで、このアイコンが付いていない製品は無いと思われますが、BBに表記されているアイコンでホローテック2の仕様をお間違えにならないよう書かせてもらいました。

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