バイクメンテナンス
シャフトにゴリゴリ感があったホイールのメンテナンス
今でも時折目にするフルクラムの「レーシング 7」。昔は一定グレード以上のエントリーモデルに多く使われていた定番のホイールですね。自社ブランドのパーツを持たない完成車によく装着されていました。
今回はホイールのメンテナンス、中でも走行性能に大きく影響を与えるハブのグリスアップについてです。
レーシング 7 自体はグリスを補給も交換もできないけれども、気になったことがあるのでまずはこのホイールに起こっていたことから。
レーシング 7に生じていたハブシャフトのゴリゴリ感
レーシング 7を買取りした時に気になった、ごく軽いゴリゴリ感。おそらく乗車状態では気が付かないと思われる、手で直接ハブシャフトを回した時だけ感じる微小なゴリ感です。
こういう場合、通常は玉当たり調整でのベアリングの締めすぎを疑います。でも、レーシング 7のハブはシールドベアリング。圧入しているだけなのにおかしいなと、どういう状況なのかシャフトを抜いて確認してみると、グリスに混じって何かがくっ付いている。
これは鋼球が割れた時の小さい鉄片のようにも見えるが、シールドだからカップ&コーンのように鋼球でレース面が削れるわけもないし、グリスが付いているのも気になるが、どうしてシールド構造なのにこんなものが付着しているんだろう?
とりあえず、グリスを拭きとってシャフトを戻してゴリゴリがなくなったからひと安心と思っていたら、これが原因ではなかった。原因はおそらくシールドのベアリングそのもの。両端のロックナットを締めたら再発したから。
廉価版のため上級モデルのように調整機能もないし、中古なのでベアリングを交換するかどうか微妙な価格帯のホイールであることと、全体的な使用感から、今回は大きな実害もないのでこのホイールはこのまま使うことにする。そのかわり、フリーボディを外したついでに、ラチェットの爪が汚れて戻りが悪かったので、トラブルを未然に防ぐためにもここも一緒にクリーニングしておく。
フリーボディの可動を左右するラチェットの動き
ベルトドライブやシャフトドライブ方式を除いて、自転車の多段ギアで採用しているのがチェーンで駆動するフリーホイールですが、その要がラチェット機構の爪です。フリーホイールを単にフリーとか、フリーボディやカセットフリーとも言います。もちろん構造はすべて同じ。紛らわしいので今回は店長がいつも使うフリーボディと呼びます。
もしも乗車中に、このフリーボディの爪が戻らなくなってしまった場合はどうなるでしょう。もちろん、ペダルを漕いでもスカスカ状態で乗ることが出来なくなりますね。持込みの普通車でたまに目にします。爪が戻らなくなる原因は、グリスの劣化、ラチェットに入り込んで固化した油汚れ、中には食用油が使われ駆動系全体がギトギトになっていたケースもありました。これにはビックリ。
ラチェットに耐熱性の低い安価なグリスが使われている普通車は次第にグリスが硬化してしまいます。屋外保管の自転車はなおさら。フリーボディはほぼ100%ノーメンテの普通車などは、こうして爪が動かなくなってしまうんですね。
レーシング 7も半分ほど戻らなくなっていたので、汚れがもっと進めばそのうちスカスカになっていたかもしれません。スポーツバイクでも、オイルを注しすぎてフリーギアが真っ黒になっているバイクは気をつけたほうがよいでしょう。
油がギアにこびり付いてその油が拭いても落ちないほど汚れているバイクは要注意。回転音が以前に比べて小さくなった時はフリーボディを外してクリーニングしたほうがよいかもしれません。
写真ではきれいになったのがわかりにくいけど、全体をクリーニングしたあとにボディを再装着し、これでこのホイールは作業完了です。ラチェット音も正常に戻りました。
ZIPPのゴリゴリホイールをメンテナンス
他にもゴリ感が気になるホイールがあったので、今回はまとめてやってしまおうと、次にデュラエースハブのホイールをグリスアップしました。こちらはもっと強いゴリゴリ感ですが、デュラクラスのカップ&コーン式ハブは、カップ(ハブのワン側)やコーン(玉押し)もしくは鋼球が虫食いにでもなっていなければ調整で直りますから安心して作業できます。
グリスアップの作業では店長はこのように丸い網を用意します。見ておわかりのとおり、これはお茶を飲む時の茶漉し網。これがとても便利です。
この網を用意するまでは、クリーニングした鋼球を何度か紛失したことがありました。ウエスの上に置いてるだけの鋼球はべた付きがなくなるからコロコロと転がりやすいんですね。
替えの鋼球は大体用意はしているけれども、もしも在庫してないサイズのものは無くなったら大変。この丸い網でそういう心配も解消されました。ご自分でメンテする方にもおすすめします。
ポイントは、濡れティッシュを乾かした状態であらかじめ用意しておくこと。作業が格段に楽になります。ウエスの上に網を置いて、その中でパーツクリーナーを掛けてから鋼球をゴシゴシ拭き取れば、グリスを落としにくい鋼球もクリーニングがとても楽チン。ただし、ティッシュが乾いていない状態だとクリーニング効果は半減しますからご注意ください。
デュラエースハブでこれまで虫食いが原因でゴリゴリ状態になったことはなかったので、今回も安心はしてましたがパーツを戻して調整後はスムーズな回転が再現されて、こちらもこれで作業は無事終了です。
鋼球を交換して解決したハブのゴリゴリ感
もう一つのホイールは、持込みバイクでガタ付きがひどかった修理品。ボールレースをクリーニング後にグリスアップし調整してみたところ、ゴリゴリを取ろうとするとガタが出て、ガタが出なくなるように調整するとまたゴリゴリが発生。
何度行ってもこのゴリゴリハブの調整は無理だったので、鋼球を交換しての対応となりました。鋼球はリアハブでは一般的サイズの1/4インチ規格、6.35mmの鋼球が片側に9個入っています。
新しい鋼球と見比べると、色の違いがよくわかります。上側の表面が擦れて変色してしまった鋼球は、肉眼では判断が付かなくても全体が変形している状態。真円の新品に換えたことでガタ付きは無事解消されました。
ハブのガタ付きは、このようにハブ自体を分解してみないと何が原因しているのかわからないことが多いです。
鋼球が変形している場合、交換しない限り解決はしないけれども、鋼球は問題なく玉押し側が原因となっている場合は、鋼球で削れている箇所がこのように一周同じ箇所で削れ具合が同じ程度だったら調整で直せるケースもあります。お勧めはしないけど、とりあえずは走行に支障がない程度に乗れればいいという場合は対応できます。
ただし、鋼球の当たり面があちらこちら不規則に削れてガタツキが大きくなっている玉押しは調整不可。そのホイールは正常には使えず玉押しの交換となります。
写真のホイールのように汎用品規格で交換ができればよいけど、メーカー専用品の場合はホイールごとのスモールパーツを取り寄せての修理となります。取引のないメーカーのパーツは扱うことができず、取引があっても旧式モデルのホイールは在庫終了で対応できないこともありますから、ホイールは早め早めにメンテナンスしておいたほうがよいですね。
ギアのゴロゴロ音を引き起こしていた原因とは
この持込みバイクは、ハブがゴリゴリしているだけでなく、ギアのゴロゴロする音も気になっていました。なぜかトップ側3枚だけで発生していてとても気になるゴロゴロ音。原因はチェーンの伸びにありました。
チェーンを新品に交換し異音は解消しましたが、伸びたチェーンを換えずに使い続けると、音だけでは収まらずギアの摩耗につながり別の問題を引き起こします。あまり経験したくはない歯飛びが起きてしまう現象です。
初めて聞く方もいるでしょう。歯飛びとは、ペダルを踏み込む時に、チェーンが伸びるとギアとの噛み合いが弱くなることで次のギアに移動する、つまりは文字通りチェーンが次の歯先へと飛んでしまう現象。
こちらの記事でも紹介しているように、歯飛びが起こるとチェーンだけではなく、ギアの交換が必要になる場合も出てきます。(リンク記事ではそれが発端でありえないトラブルが発生してしまった)
知っている人は当然のように定期的にチェーンを交換されます。でも、あまりメンテナンスをされない方はご存じないかもしれません。交換の目安は5,000km。廉価モデルのコンポはもっと早めに交換してもよいと思いますが、新しいチェーンに換えるタイミングは専用チェッカーを使うと判断しやすいですね。測定後、伸び率が0.75%に達していたら、そのチェーンは交換時期を迎えています。
チェーンオイルの注しすぎや、チェーンをノーメンテナンスで乗っている場合はもっと早く交換しなければならない場合もあるでしょう。異音が発生したら即交換です。定期的なチェーン交換が快適に乗り続けるコツ。チェーン交換は二次的なメリットもあって、新車の頃の、気持ちの良い走行感が再現されること間違いなし!