レースで集団走行する場合はローテーションがセオリー。その時に2つ以上の集団が段状に隊列を組んでいる場合もあって、この状態をエシュロンという。
ローテーションでは、できるだけ風の抵抗を避けるために前走者の風下に位置取るようにする。しかし、風向きあるいは風の強さでその角度が変わるため、時には道路幅いっぱいを使って横に並ぶ時もある。ローテーションは一般的には縦列状態だが、この場合は横並びでローテーションを繰り返す。こちらの写真をみるとわかりやすい。
この写真のレースでは、右からの強風に対し、横に時計まわりでローテーションしている。後方の集団では、右端に位置するアスタナの選手が左側に視線を送っているので、おそらく先頭を交代するため2列目に下がる寸前なのだろう。で、今度は1列目の2番目の選手が右側にラインを変えながら先頭を走ることになる。1列目は全体的に右側に移動し、2列目は左側に移動することで2列目の左端の選手が1列目に加わる。
しかし、この写真では1列目の左端が空いている。これは、2列目の左端の選手が1列目に上がる前の状態か、もしくは、2列目で3人固まっている状態で1列目が1台分空いているし、また青パンツの選手も後ろに下がっていることからも、左端の選手が1列目に上がらない状態なのかもしれない。プロレースでは、縦列状態のローテーションでも、最後尾の選手がローテーションに加わらないシーンをよく目にする。その時のコンディションによってローテーションを壊さないためだと思うが、横列状態でもそういうケースはあるだろう。
ところで、前方の集団は1列で、後方の集団が2列なのはなぜか。これは先頭を牽く時間に関係してくる。
その前に、少しローテーションの仕方を説明しておこう。縦列状態でも同じだが、人数が多く先頭を牽く時間が短ければ大きい輪のように2列で進む(これをファンを回すとよく言いいます)。例えば、縦列状態の場合は、左風で半時計まわりでローテーションする場合、先頭を終えて左の待機列に移る選手は車線を変えたら少しスピードを緩める。慣れないと後ろの選手にぶつかりそうで恐く感じると思うが、しかし、ローテーションの輪が大きいほど右側の車列とのスピード差は小さくゆっくりとしたスピードダウンとなる。(逆に数人で回している場合は、すぐに車列に戻るようにする。足を休ませるのは、先頭交代を終えたあとではなく、車列の最後尾に戻ってからだから)
このように、ローテーションでは、集団が大きければ待機列は車列よりもスピードを緩めた状態で走行し、車列の最後尾まできたらまたスピードを戻してそちらに加わるわけだが、平地では風向きが変わったり集団に動きがなければ常にこの繰り返しである。その集団で全員がローテーションに参加している場合は、先頭は牽くというより先頭に出たら車線を変えて全員がこれを繰り返している状態。この走り方が写真の後方集団。横列状態でこのようにローテーションしているため2列になっている。
片や、前方の集団は先頭を牽いている時間が長いから1列なのだ。通常、エシュロンの状態となる強風の場合は、強い選手ほど前の集団に位置するケースが多いと思うが、それも関係していると思う。
エシュロンでは、道幅いっぱいに広がった集団に加われない場合、最後尾の選手から後ろは縦に連なるケースもある。横風が強い場合は、前の集団に加われなかった選手はまた別の隊列を組むことになる。縦に連なって一人で横風を受けながら走るよりもローテーションしながらのほうが体力を温存できるからだ。こうして、このように二重にも三重にも集団が形成されることもあるが、こと勝負どころでは、各チームとも前方の集団に勝負に絡める選手を送り込んでいるはずだ。風が強いところほど位置取りがとても大事だから。