昔のロードレースでは、ゴールを前にしてこういう光景を見ることも多かった。平地のレースで、ゴールの数キロ手前からダッシュして、そのままゴールまで逃げ続けようと果敢にアタックするのだが、もちろんこの選手達は勝つことを目的にアタックしている。
特にステージレースで、ゴール勝負に見込みのない選手が、何とかゴールまで逃げようとアタックを試みる光景をよく目にした。スプリントに強い選手でなければ、一人でゴールを目指したほうが優勝する確率が高くなるからだ。ゴールまで大集団が崩れず、この中にスプリンターと呼ばれる選手達が含まれている場合はスプリンター以外はまず勝つことができない。
飛び出してもあまり距離が長すぎると足が持たないので、大体、ゴールの数キロ手前からダッシュして逃げようと試みる。時には残り数十キロを残してのギャンブルアタックがみられることもあったけど、こういう選手達をルーラーと呼ぶ。このような動きをする選手をすべてこう呼ぶわけではないけれども、選手の走りのタイプに応じて、スプリンターとかクライマーとか呼び分けるように、ルーラーと呼んだりする。
ひと昔前まではアタック合戦を繰り広げるケースもみられて、平地のステージでもゴールシーンはエキサイティングで面白かった。
しかし、今ではゴールが近づくと列車の隊列ができてしまい、そういう光景も少なくなった。速度を上げて集団から飛び出す選手を防いでいるためだ。このときのスピードは時には60km/hにも達する。ここから逃げるのは至難のわざだ。というか、無理。
スプリンターを勝たせる為にはより有効な作戦だけれども、観客側からみると、スプリントが強くて勝つべき選手がいつも順当に勝利するレースは面白みには欠けると思う。
ところで、なぜ、ゴール前のアタックがステージレースで多かったのか。それは、ステージレースでの最終目標は、全ステージを終えたときの総合優勝。だから、総合優勝に絡まない選手の動きは見逃されたりする。
これがワンデーレースになると、ゴール数キロ前でアタックしてもそういう動きはスプリンターを抱えるチームのアシストがすぐに潰しに掛かるので、平地でのアタックはなかなか決まらない。で、あえて無駄な動きは起こさないから、今ほど隊列がしっかり機能していなかった昔のレースでもワンデーレースでは少なかったように思う。