カーボンの素材特性のことはここでは抜きにしてお話ししましょう。これはレースへの適正とは関係なく、乗る人の技量に関係してくる問題です。ストレートタイプのフォークは、その特性として曲がっているフォーク(ベンドフォークといいます)よりもハンドルの操作性がクイックになります。モデルによってこの特性が強くなってくると、低速走行している場合に慣れない方では手を離して走行できないこともありますね。
ロード乗りの間で、よくハンドリングがどうこうという声を聞きますが、これはトレールと、フォークを含めたフロント周りの剛性感から出てくる言葉でしょう。トレールというのは、フレームの図面上で見ると、キャスターアングル(ヘッドパイプの角度でヘッドアングルとも)の延長線上と、フロントエンド軸に垂直なラインを引いた時にできる接地地点での幅をいいます。この数値が大きいほど直進安定性が増します。
トレール数値はハンドル操作や直進性を判断するための材料ともなりますが、トレールが大きいモデルはバイクを真っすぐ走らせる直進安定性は良いけれども、ハンドリングは重くなります。トレールが小さかったら反対にハンドルは軽く感じますが、小さすぎるとふらつきやすくなります。メーカーではそのバランスをとってフロント周りのディメンションを決めているはずですが、しかしこのトレール数値は通常はメーカーカタログには記載されていませんので、代わりにオフセット量で判断します。
カーボンフォークの場合、オフセット量は乗りやすいように45mm前後が一般的な数値です。もちろんフレームサイズによって設計上の制約もありますから+10mmくらいは許容範囲ですが、もしも大きく外れている場合は乗りにくいフレームとなってしまいます。店長が若かりし頃に持っていた1台のイタリア製フレームも、サイズが起因していたのかずいぶん乗りにくかったことを覚えています。調子が悪いのかと錯覚するくらい本当に走らないフレームでした。きっと設計上の問題だったのだと思います。
さて、余談で長くなってしまいますが、「トレール」の話をしたので、当店一押しメーカー「ANCHOR」について少しご紹介しましょう。一般的にはフレームサイズごとにトレール値をバリエーション持って用意しているメーカーはそう多くはありません。合わせるフロントフォークのオフセットの種類も抑えたサイズ展開をしています。メーカーによっては、フレームサイズが違ってもモデルによっては1種類のフォークで対応させているメーカーもあります。
しかし、ANCHOR は一つのモデルに対し、4種類。ある程度目的が限定されるモデルや、女性用などサイズ展開が少ない一部のモデルを除いてフロントフォークについてはこの対応です。これは、最適なハンドリング性能を得るにはどうすればよいか、ANCHOR が導き出したフレーム設計への回答です。サイズに応じてオフセット量の異なるフロントフォークが必要だとANCHOR は考え、このようにトレール値を適正化しているのです。
レースにお使いになられるなら、その世界で実績を上げているANCHORは、アティックも安心してお奨めできるメーカーです。
さらに長くなりますが、もうひとつ、今後のご活動に参考になると思いますからご紹介します。ロードレースを前提にバイク選びをされると思いますので「スリップアングル」についても少しお話しましょう。普段のトレーニングでも参考になるものと思います。
ロードに乗る方は、誰でもできるだけ軽い走行感を望まれますよね。それに影響を与えるものとして「転がり抵抗」があります。リアホイールを装着する時にセンターを出しておくのはレーサーとして必須の作業となりますが、万一、進行方向に向かってホイールがずれて装着されていたとしたら、このずれている角度の分を「スリップアングル」といいますが、この「スリップアングル」が生じた方向に向かって、「コーナリングフォース」という力が働きます。これはタイヤの接地部に横方向の変形を生じさせますので、走行中に無駄な力が加わります。
いくら高価で軽いホイールであったとしても、センターのずれているホイールではそのメリットを十分に活かすことができません。整備車でもたまに見かけますがあまりに大きくずれていて、走行感が重く感じるという場合はホイールのセンターを確認してみたほうがよいかもしれません。このように、レース用に決戦ホイールを用意する時などはセンター出しにも気を付けたほうがよいですね。