代謝機能を活性化することで体力アップが図られますが、そのためにはどのようなトレーニングを行えばよいのでしょうか。一例をご紹介します。
ここでは心拍トレーニングを体感しやすいローラー台でご説明します。運動強度は各人共通ですが、心拍数を基準にして、時間やセット数、負荷、使用ギアは調節してください。
※AT値が、もし、運動強度の80% に満たない場合は、もっと有酸素能力が上がるまで無酸素域でのトレーニングは控えたほうがよいかと思います。
1. 筋肉中の毛細血管を増やすことで酸素の摂取量を多くする。
2. 脂肪酸をエネルギーに変える体謝機能の向上。
⇒ミトコンドリア内の中性脂肪を分解する酵素「リパーゼ」を増殖させる。
3. 疲労の回復を促進させる。
⇒乳酸を処理する酵素の増加と、有酸素運動時にヘモグロビンが二酸化炭素を排出させる働きを高める。
・ 心拍可動域の60~75% 値で1時間以上。時間は長いほど効果が高い。
・ ケイデンスは90~100回転。
1. 心肺機能を強化し、運動中に活用される赤血球中のヘモグロビンに含まれる酸素の運搬能力を高める。
2. 持久筋(タイプ1筋繊維)の割合を増やす。
⇒サテライト筋細胞を遅筋に増殖させることと、余分な速筋を遅筋的な性質に変えること。
a) 有酸素能力を向上させたいとき
・心拍可動域の80%~AT値で20~30分を1セットとして、2~3セット。セット間のリカバリーは5分以上。
・ケイデンスは100回転以上。
b) 筋持久力を高めたいとき
・心拍可動域の75%〜80% 値で1時間以上を目標に。(数回1〜2分のレストは可)
・ケイデンスは100回転前後。
1. 有酸素特性のある速筋(タイプ2a筋繊維)を発達させる。
⇒レース活動にはもっとも重要な筋繊維。
2. 運動中の回復力の強化
⇒発生した乳酸を分解させて、いかに早くエネルギーに再合成できるかの能力アップ
3. 有酸素運動領域を広げる
⇒心臓容積の拡大と心拍出量の増大
a) 心肺機能の強化
・5分走×2~3分レスト×5本を、1セット以上。セット間のリカバリーは10分以上。
・ケイデンスは100~110回転。
・2分くらいからAT心拍数以上になる負荷で。
b) 筋力の強化
・3分走×3~4分レスト×3~5本を、1セット以上。セット間のリカバリーは20分以上。
・ケイデンスは90~100回転。
・「心肺機能の強化」よりも負荷を1段階高くし、1分くらいからAT心拍数以上になるように。
負荷を掛け過ぎると筋疲労で設定時間をクリアできなくなるから注意する。また、ミドルトレーニング終了後にATインターバルを行うと、スピードの強弱へ対応できる脚質を作るのに有効。
1. 無酸素運動で産生される乳酸に耐えられる筋繊維(タイプ2b筋繊維)をつくり、AT領域を超えた無酸素域でのパフォーマンスを上げる。
2. 乳酸処理能力の向上
3. 距離が長めのスプリント力を強化する
・ 全力30秒もがき×2~3分レスト×3本を、1セットか2セット。セット間は完全回復するまで休む。
・ 30秒間で限界にくる負荷を設定。
・ ケイデンスをできるだけ高めにするようにギアを選択。
※注1. このトレーニングは酸素負債が大きいので、3本こなせなくても酸欠で倒れそうになる前にリカバリーに入ること。
※注2. ギアと負荷を変えて40秒間でも同様の効果を得られるが、40秒を越える設定時間は負荷が低くなり目的を外れてしまうので注意する。
体に対するダメージが大きいため、3日あけて週2回まで。2セット以上の場合は週1回まで。
1. 平地のスピードアップと上りのスピードアップ
2. スピードの変化に対応するための筋力アップ
・2分走×3~5分レスト×2本を、1セットか2セット。時間は負荷によって調整するが最長2分まで。
・ギアは重めで、ケイデンスは50~60回転。
心肺に負担を掛けずに高負荷トレーニングとして登坂能力を強化したい場合は、ローラー台よりも実走で5%~8%くらいの上り坂で行うSFR(Slow Frequency Revolutions)のほうが効果は高いと思われます。
その場合のギアは、フロントは必ずアウターを使用し、ケイデンス50~60回転を維持できるギアを選択して、時間は勾配に合わせて1分間~3分間を目安とします。距離で行う場合は、おおよそ500m~1kmが適正な距離かと思います。60回転以上回せる場合はギアが軽いので見直します。
1本終わって下り終えたらレストを走行時間と同じくらい取って、これを何本か繰り返します。本数は適宜調整します。実施頻度は市民レーサーの方なら週1回で十分です。
[SFRの注意点]
SFRは、自己の身体能力に合わせてトレーニングメニューに組み込む必要がありますが、もしも、まだしっかりしたペダリング技術が身に付いていない状態でこのトレーニングを行っている場合、SFRは下半身を強化するトレーニングとなりますから、腰や膝、足首に大きな負担が掛かるため故障の原因ともなり得ます。ご注意ください。
このファイルをお使い頂きますと、ギア比ごとにケイデンスとスピードの相関関係がひと目でわかりトレーニングの際に大変便利です。
「タイヤ周長」を入力しエンターキーを押すと、ギア比ごとのケイデンスに対するスピードが自動計算されます。
ケイデンス機能が未搭載のサイクルメーターでトレーニングをなさる場合は、この表に表示されるケイデンスを参考にしてください。